サーモンは完璧なスーパーフードの食材の一つです。
ただし間違えた方法で火を通してしまうと、サーモンに含まれるオメガ3脂肪酸が傷んだり流れ出てしまったりしてノーグッド!
オメガ3脂肪酸は人間の体内で合成できない必須脂肪酸。
調理でサーモンに含まれるオメガ3を逃してしまったら元も子もありません。これは効率よく摂取するために、火を通しすぎないよう、魚油を傷めず逃さない蒸し焼きがとても良い調理方です。...
・牧草飼育牛と穀物飼育牛の3つの大きな違い。
・栄養素が豊富なグラスフェッド・ビーフ。
・あまり知られていないグラスフェッド・ビーフの5つの恩恵。
健康ブームの到来で、最近徐々に注目を集めている食品があります。それは、グラスフェッド・ビーフ(牧草飼育牛)。牧草を食べて育った牛の肉のことです。牛肉というと「不健康な脂が多い」「腸内環境を悪化させる」「太る」など、健康とはほど遠いイメージがありますよね。でも、その考え方は大きく見直され始めています。知られざる健康フード、グラスフェッド・ビーフの驚きの効果と、グレインフェッド・ビーフ(穀物飼育牛)との違いを検証していきましょう。
ベジタリアンやマクロビの考え方では、肉は食べないのが良い、とされていますが、この考え方は最近の多くの研究で否定されてきています。栄養学的に肉は必須アミノ酸がバランス良く含まれており、ビタミンB群も摂取できることから、基本的にとても体に良いのです。
しかし、肉牛の飼育方法によって、その肉の人体への影響は変わってきます。日本で販売されている牛肉のほとんどはグレインフェッド・ビーフ(穀物飼育牛)。つまり、米やトウモロコシなどの穀物を食べて育った牛の肉です。
穀物というのは毒性を伴うカビが生えやすく、その結果として肉の脂身部分などにカビ毒(マイコトキシン)が蓄積されたり、さらには穀物を栽培するのに使われた農薬などの有害物質が蓄積されたりしてしまいます[#]Alshannaq, A. & Yu, J.-H., 2017. Occurrence, Toxicity, and Analysis of Major Mycotoxins in Food. International journal of environmental research and public health, 14(6). Available at: http://dx.doi.org/10.3390/ijerph14060632. 。牛の飼料に使用される穀物は、一般的に人間が口にする穀物と比べて品質管理が数段落ちます。それを食べて育った牛の肉を食べるということは、このような低質な穀物を私たちが間接的に食べていることになるともいえるのです。
また、グラスフェッド・ビーフには、グレインフェッド・ビーフと比べてオメガ3という良質な脂分や、脂肪燃焼を助ける共役リノール酸(CLA)、さらにビタミンA・ビタミンE、抗酸化物質が豊富に含まれているという研究結果が報告されています[#]Daley, C.A. et al., 2010. A review of fatty acid profiles and antioxidant content in grass-fed and grain-fed beef. Nutrition journal, 9, p.10. [#]Alshannaq, A. & Yu, J.-H., 2017. Occurrence, Toxicity, and Analysis of Major Mycotoxins in Food. International journal of environmental research and public health, 14(6). Available at: http://dx.doi.org/10.3390/ijerph14060632. 。つまり、同じ牛肉でも一般的にグラスフェッド・ビーフ(牧草飼育牛)の方が有害物質の心配が少なく、より栄養価が高いのです。
グラスフェッド・ビーフとグレインフェッド・ビーフの違いは大きく3つあります。詳しく見てみましょう。
1. 成長の早さと味が違う!
グラスフェッドとグレインフェッドでは、まず成長の早さが異なります。日本のスーパーマーケットで売られている国産牛肉のほとんどはグレインフェッド・ビーフですが、穀物飼育牛は主に大麦、トウモロコシ、大豆、魚粉などを食べて育っています。糖質が多くエネルギー分の多い飼料で飼育することで、牛は早く成長し、しかも脂身がたくさん入って、一般に「高級」で「おいしい」とされる牛肉になるのです[#] Mandell IB, E. al, Effects of forage vs grain feeding on carcass characteristics, fatty acid composition, and beef quality in Limousin-cross steers when time on feed ... - PubMed - NCBI. Available at: https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/9814903 [Accessed February 25, 2018]. 。
一方、牧草飼育牛は牛本来の食べ物である牧草や野草を食べて育ちます。牧草にはビタミン・ミネラルなど牛の健全な成長のために欠かせない栄養素が豊富に含まれていますが、カロリーやたんぱく質が少ないため、成長は遅く、脂身が比較的少なくなります。これは、日本人好みの柔らかな舌触りとジューシーなうま味を持つ霜降り牛肉とはかなり違ったものです。
また、グラスフェッド・ビーフには独特の臭みがあるという人もいます。近年、日本でも「ジビエ」ブームがありましたが、自然の食べ物に近い飼料を食べた牛の肉はいわゆる「ジビエ」的な臭みが加わるのかもしれません。
日本にも多く輸入されているオーストラリアやニュージーランド産の牛肉は、主に自然に育った牧草を飼料にしており、放牧して育てられます(ただし、日本へ輸出する肉にはグレインフィニッシュといって、最後の数カ月間は穀物飼育、というのも多いので気を付けましょう)。
アメリカや日本では穀物を飼料の主体にしています。世界でも人気の国産和牛では、効率的に牛を太らせ霜降り肉にするため、牛たちを牛舎に入れ、運動させないのが一般的です[#]Muroya, S. et al., 2016. Differences in Circulating microRNAs between Grazing and Grain-Fed Wagyu Cattle Are Associated with Altered Expression of Intramuscular microRNA, the Potential Target PTEN, and Lipogenic Genes. PloS one, 11(9), p.e0162496. 。牛界のメタボですね。
牛は野草や牧草を本来主食とするため、穀物飼料だけでは牛の消化器官の細菌叢が変化し、病気にかかることもしばしばあります[#]Nagaraja, T.G. & Chengappa, M.M., 1998. Liver abscesses in feedlot cattle: a review. Journal of animal science, 76(1), pp.287–298. 。そのため多くの場合、飼料に薬剤を混ぜたり抗生物質を投与したりすることで栄養不足と病気を防いでいるのです。また、成長ホルモンも飼料に混ぜ、不自然に成長を早めています。
2. コストが違う!
グラスフェッドとグレインフェッドでは、肉牛を育てる際のコストも大きく異なります。オーストラリア・ニュージーランド産の牛肉が比較的安い理由を深く考えてみたことがありますか? 漠然と、安いから低品質なのだろう、と考えるのは大きな間違いです。オーストラリア・ニュージ―ランドでは、その豊かな自然を活かし、自然の牧草(クローバー、ススキ、れんげなど)を餌にしていますが、これらは自然に生えている植物なので、購入のコストはほとんどかかりません。そのため基本的に飼育代をかなり低く抑えることができます[#]Morris, S.T., SHEEP AND BEEF CATTLE PRODUCTION SYSTEMS. Available at: https://www.landcareresearch.co.nz/__data/assets/pdf_file/0020/77033/1_5.... 。
一方、グレインフェッドの牛では、脂ののった牛に育てるために糖分の高い飼料を配合し、さまざまな薬剤を投与するのが一般的なので、一頭にかけるコストがグラスフェッド・ビーフと比べてとても高くなるのです。
3. 栄養価が違う!
注目すべき最大の違いといえば、栄養価でしょう。グレインフェッド・ビーフとグラスフェッド・ビーフでは同じグラム数のステーキを食べても栄養価が大きく異なります。下の表をご覧ください。グラスフェッド・ビーフはオメガ3や脂肪燃焼を助ける共役リノール酸(CLA)を多く含み、そのほか抗酸化作用の高いビタミン類も豊富です。
(ncbiより引用)
これ以外もほとんどの栄養価の項目でグレインフェッド・ビーフを上回っているのです。
穀物飼育牛(200g当たり)[#]Anon, Food Composition Databases Show Foods -- USDA Commodity, beef, ground, bulk/coarse ground, frozen, raw. Available at: https://ndb.nal.usda.gov/ndb/foods/show/7578?fgcd=Beef+Products&manu=&lf... [Accessed February 26, 2018b]. | 牧草飼育牛(200g当たり)[#]Anon, Food Composition Databases Show Foods -- Beef, grass-fed, ground, raw. Available at: https://ndb.nal.usda.gov/ndb/foods/show/3749?fgcd=Beef+Products&manu=&lf... [Accessed February 26, 2018a]. | |
カロリー | 456.0kcal | 396.0kcal |
たんぱく質 | 34.74g | 38.84g |
ビタミンB6 | 0.482mg | 0.710mg |
亜鉛 | 7.18mg | 9.10mg |
ビタミンB12 | 3.82μg | 3.94μg |
鉄分 | 3.38mg | 3.98g |
カリウム | 492.0mg | 578.0mg |
マグネシウム | 34.0mg | 38.0mg |
さらに、2008年には、オハイオ州、テキサス州、南ダコタ州から集められたグレインフェッド・ビーフと、米国13州から集められたグラスフェッド・ビーフの栄養素を比較した研究結果が発表されています。それによると、グラスフェッド・ビーフには、多くのカロテノイドが含まれていることが分かりました[#]Leheska, J.M. et al., 2008. Effects of conventional and grass-feeding systems on the nutrient composition of beef. Journal of animal science, 86(12), pp.3575–3585. 。このカロテノイドは、動物や植物が自然に持つ黄色や赤色の色素で、グラスフェッド・ビーフの脂身やグラスフェッド牛に由来するバターの濃い黄色に表れています。カロテノイドは体内で抗酸化作用を発揮し、細胞の損傷、老化などを予防する機能性があるといわれています。
1. へルシーな脂肪分が豊富
・オメガ3を多く含む
オメガ3は、栄養学的には健康維持に欠かせない必須脂肪酸として位置づけられています。体内で作ることができないため、食事から積極的に摂取するしかないのですが、牧草で飼育された牛は、グレインフェッド・ビーフより比較的多くオメガ3を含むことが着目されています[#]McAfee, A.J. et al., 2011. Red meat from animals offered a grass diet increases plasma and platelet n-3 PUFA in healthy consumers. The British journal of nutrition, 105(1), pp.80–89. 。
・脂肪燃焼作用
グラスフェッド・ビーフには共役リノール酸(CLA)がグレインフェッド・ビーフの約2~3倍多く含まれています[#]Daley, C.A. et al., 2010. A review of fatty acid profiles and antioxidant content in grass-fed and grain-fed beef. Nutrition journal, 9, p.10. 。CLAは健康を促進し、脂肪を燃焼させる機能があるため、体重が気になる方にもお勧めです[#]Gaullier, J.-M. et al., 2007. Six months supplementation with conjugated linoleic acid induces regional-specific fat mass decreases in overweight and obese. The British journal of nutrition, 97(3), pp.550–560. [#]Whigham, L.D., Watras, A.C. & Schoeller, D.A., 2007. Efficacy of conjugated linoleic acid for reducing fat mass: a meta-analysis in humans. The American journal of clinical nutrition, 85(5), pp.1203–1211. 。
・血中コレステロール値を調整
CLAはグラスフェッド・ビーフの最大の栄養価といっても過言ではなく、血中悪玉コレステロールを下げるという研究もあります[#]Derakhshande-Rishehri, S.M. et al., 2015. Association of foods enriched in conjugated linoleic acid (CLA) and CLA supplements with lipid profile in human studies: a systematic review and meta-analysis. Available at: https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25379623. 。また、グラスフェッド・ビーフは飽和脂肪酸の一種であるステアリン酸も多く含んでおり、こちらも悪玉コレステロール値を下げ、血中コレステロール値を調整する機能性を示しています[#]Bonanome, A. & Grundy, S.M., 1988. Effect of dietary stearic acid on plasma cholesterol and lipoprotein levels. The New England journal of medicine, 318(19), pp.1244–1248. [#]Li, Y. et al., 2015. Transcriptomic Profiling of Spleen in Grass-Fed and Grain-Fed Angus Cattle. PloS one, 10(9), p.e0135670. 。
・血糖値を健康なレベルに
良質な脂質を含む健康的な食事は、血糖値を安定させるということが最近の研究で分かってきています。2016年、『the Journal of Endocrinology and Metabolism』という学術誌において、肥満児に対してCLAが及ぼすインスリン反応の研究が発表されました。CLAを摂取した被験者とそうでない被験者では、CLAを摂取した被験者のほうがインスリンの反応が向上したという結果が出ています[#]Garibay-Nieto, N. et al., 2017. Effects of Conjugated Linoleic Acid and Metformin on Insulin Sensitivity in Obese Children: Randomized Clinical Trial. The Journal of clinical endocrinology and metabolism, 102(1), pp.132–140. 。インスリン感受性が高まることは、血糖値を健康なレベルにコントロールすることにつながります。
2. ホルモン剤・抗生物質の心配が少ない
アメリカでは抗生物質の約80%が肉牛のような家畜に使用されるといいます[#]Martin, M.J., Thottathil, S.E. & Newman, T.B., 2015. Antibiotics Overuse in Animal Agriculture: A Call to Action for Health Care Providers. American journal of public health, 105(12), pp.2409–2410. 。牛舎で飼育されているグレインフェッド・ビーフには、病気の発生を減らし、成長率を高めるため、多くの場合、餌に抗生物質を入れています。日々食卓にあがる牛肉に実は抗生物質が残留している可能性がある…。それを口にする私たち人間への影響はどうなのでしょうか。しかも牛肉を頻繁に食べる人の場合は…?
その点グラスフェッド・ビーフは必要に応じてホルモン剤が投与されることもありますが、広々とした牧草地帯で育つ牛たちには抗生物質は基本的に必要ありません。グラスフェッド・ビーフではホルモン剤や抗生物質の投与量はグレインフェッド・ビーフに比べて格段に少なくなっています[#]Noyes, N.R. et al., 2016. Characterization of the resistome in manure, soil and wastewater from dairy and beef production systems. Scientific reports, 6, p.24645. 。あなたの身の一部になる食べ物だからこそ、気を付けたいですよね。
3. 抗酸化作用
グラスフェッド・ビーフにはカロテノイドやビタミンEなどの抗酸化作用を持つ物質が多く含まれているので、生活習慣病の予防や美容にも良いといわれています。
4. カビ毒の回避
穀物を食べて育った牛や工場で生産される肉には、草を食べて育った牛に比べ、カビの二次代謝産物として産生されるカビ毒(マイコトキシン)が含まれているといわれます。穀物飼料に生えているカビがその最大の原因と考えられていますが、野生の草を食べて育った牛にはその心配がありません[#]Gallo, A. et al., 2015. Review on Mycotoxin Issues in Ruminants: Occurrence in Forages, Effects of Mycotoxin Ingestion on Health Status and Animal Performance and Practical Strategies to Counteract Their Negative Effects. Toxins, 7(8), pp.3057–3111. [#]Alshannaq, A. & Yu, J.-H., 2017. Occurrence, Toxicity, and Analysis of Major Mycotoxins in Food. International journal of environmental research and public health, 14(6). Available at: http://dx.doi.org/10.3390/ijerph14060632. 。
5.牛にも人にも、環境にも良い
グラスフェッド・ビーフはグレインフェッド・ビーフに比べて栄養価が高いことはお話ししましが、グラスフェッド・ビーフは健康に良いだけではありません。環境にも優しい食品なのです。伝統的なグラスフェッド・ビーフの飼育・生産方法は温室効果ガスを削減し、生物多様性を促進するという研究がなされています (異論を唱える学者もいますが)[#]Collins, S.L. et al., 1998. Modulation of diversity by grazing and mowing in native tallgrass prairie. Science, 280(5364), pp.745–747. [#]Koneswaran, G. & Nierenberg, D., 2008. Global farm animal production and global warming: impacting and mitigating climate change. Environmental health perspectives, 116(5), pp.578–582. 。
環境に負担をかけず、また薬剤を投与せずに健康に育った牛、そしてそれを口にする人間にも栄養価の高い食品、それがグラスフェッド・ビーフなのです。
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