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養殖魚と天然魚。どれ位違うの?
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養殖魚と天然魚。どれ位違うの?

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・養殖魚と天然魚のオメガ3とオメガ6の含有量の違いとは?
・大きな違いのある養殖魚と天然魚の抗生物質投与
・PCB(ポリ塩化ビフェニル)やダイオキシン、水銀レベルとの関連性は?

 

スーパーなどで食材を購入する際に、多くの人が安価な商品を選ぶ傾向にあるかと思いますが、購入の際に気になるのが魚です。価格の違う養殖魚と天然魚を目の前に、思わず手にしてしまうのが養殖魚。実際、見た目はあまり変わらなくても、食べてみると味に違いがあるようにも感じます。でも、違いは味だけなのでしょうか?2030年までには養殖魚が人が消費する魚の62%になるとも言われていますが、今回はこの2つにフォーカスしていきます。

 

養殖魚と天然魚のオメガ3とオメガ6の含有量の違いは?

さまざまな栄養素を得ることができる魚は、特に必須脂肪酸のオメガ3の貴重な摂取源であるのはみなさんもご存じの通り。オメガ3といえば、摂取過多による健康リスクが懸念されているオメガ6との適切な摂取バランス (オメガ3:オメガ6 1:1~1:5) がとても大切。オメガ6の摂りすぎにより慢性炎症疾患のリスクが上がる可能性や悪玉コレステロールの酸化の促進などさまざまな健康リスクが懸念されているため、養殖魚と天然魚のこれらの脂肪酸の含有量は気になるところです。ブリとマグロの国内産の養殖魚と天然魚を例にオメガ3とオメガ6の含有量を見ていきましょう[#]“[脂肪酸分析によるブリ、ヒラメ、トラフグ、クロマグロの養殖判別法の検討].” n.d. Accessed January 17, 2022. http://www.famic.go.jp/technical_information/investigation_research_repo...

 

 

ブリとマグロでは養殖及び天然産のオメガ3とオメガ6の比率が異なりますが、マグロは、誤差はあるものの合計すると顕著な差異は見られません。その理由は、養殖のマグロの餌には配合飼料が使用されていない傾向にあり、サバ類やイカ類などの生餌が中心であるためだと言われています。これはあくまでもマグロのような生食で餌付けられた養殖魚の話。多くの養魚場では大豆かす等の植物性たんぱく質を原料とした配合飼料が使用されているので、ブリのように、オメガ6(リノール酸)含有量が養殖魚の方がかなり多くなる傾向があります(ブリの場合は養殖の方がオメガ6が天然魚の 7.75 倍)。DHAの含有量の差も、配合飼料で養殖されたブリより天然のブリの方が豊富なのが分かります。ヒラメやトラフグなどもブリの場合と同様の数字が報告されています。このように、養殖魚はオメガ6の大きな摂取源となってしまうため、天然魚よりも少ないオメガ3の摂取に加えて実はオメガ6も同時に多く摂取してしまっているということを認識しておきましょう。

 

 

飼料の種類によって魚の脂肪酸組成は大きく変わりますので、配合飼料で育てられたビーフと牧草で育てられたグラスフェッドビーフの味に差異があるように、養殖魚と天然魚に味の差があっても不思議ではありませんよね。ほとんどの人が養殖魚を食べることに慣れてしまっているため、逆に天然魚を食べた時に違和感を感じるかも?でも、そもそも天然魚を食べていた私たちにとって、その違和感こそが本来得るべき栄養素が詰まった味なのです。
 

 

養殖魚と天然魚の大きな違いの1つが抗生物質。

余計な抗生物質の摂取は極力避けるべきということは以前の記事でもお伝えしましたが、養殖魚にも感染症や病気予防を目的とした抗生物質の使用が、直接注入及び水中に分散させた形で使用されています[#]Oaklander, Mandy. 2014. “There Are Antibiotics In Your Fish.” Time. October 22, 2014. https://time.com/3531828/antibiotics-fish-seafood/.

チリ産のサーモンの抗生物質年間使用率が、抗生物質の使用が厳しく制限されているノルウェーに比べて530倍にものぼるということは以前の記事でもお伝えした通り、産地によってその使用量は大きく異なります。日本が多く輸入している産地国で抗生物質使用量が高いとされる国は[#]“日本が輸入(ゆにゅう)しているおもな魚や魚以外の水産物の輸入量についておしえてください。.” n.d. Accessed January 17, 2022. https://www.maff.go.jp/j/heya/kodomo_sodan/0607/03.html.

・中国 マグロ・カジキ類/イカなど
・インド エビ
・ベトナム エビ、イカ

 

この3か国だけで水産養殖における世界の抗菌薬消費量の約74%を占め、アジア太平洋全域では、93%とアジアでの抗生物質のシェアが圧倒的に多いのです[#]Schar, Daniel, Eili Y. Klein, Ramanan Laxminarayan, Marius Gilbert, and Thomas P. Van Boeckel. 2020. “Global Trends in Antimicrobial Use in Aquaculture.” Scientific Reports 10. https://doi.org/10.1038/s41598-020-78849-3. 。また、この消費量は2030年までに33%増加するということが予測されているため、その健康への悪影響が懸念されています。

インドでの水質調査では、100%の養魚場とエビ養殖場で危険なレベルの鉛とカドミウムが検出され、この水質悪化による養魚の感染症予防のために抗生物質を多用しているという悪循環が報告されています[#]Pandey, Ashish. 2021. “Study Finds Hazardous Levels of Insecticides, Antibiotics in Fish, Shrimp Farming in 10 States.” India Today. January 15, 2021. https://www.indiatoday.in/india/story/study-finds-hazardous-insecticides.... 。また、未承認の抗生物質を使用して養殖された中国産のナマズ、エビ、ウナギ等の5種類の養魚が、アメリカのFDA(米国食品医薬品局)により2007年に輸入が禁止。この未承認の抗生物質の1つは、薬剤耐性菌を増やす可能性があるフルオロキノロンで、日本では使用が許容されています。

 

 

スーパーなどで頻繁に見かけるチリ産のサケが抗生物質の問題で注目されがちですが、アジア諸国での養魚も結構な量の抗生物質が使用されているのはあきらか。医師からの処方や家畜などから摂取する抗生物質と同様に、魚からも極力体に取り入れないように心がけたいものです。
 

 

魚介類と言えば気になるのが水銀レベル

養殖であろうと天然であろうと魚は水銀などの重金属をはじめPCB(ポリ塩化ビフェニル)などさまざまな汚染物質が含まれた海水で育つため、基本的には魚を食べる以上これらの物質を摂取することは回避できません。そんな中で、水銀含有量のレベルが高い傾向にあるのは実は天然魚。ある研究では、飼料中の水銀濃度の差、食物連鎖の違い等の理由により、野生の魚と比較して養殖魚の方が一貫して水銀濃度が低いという結果が報告されています。しかし一方で[#]Karimi, Roxanne, Timothy P. Fitzgerald, and Nicholas S. Fisher. 2012. “A Quantitative Synthesis of Mercury in Commercial Seafood and Implications for Exposure in the United States.” Environmental Health Perspectives 120 (11): 1512. 、高濃度のPCB(ポリ塩化ビフェニル)やダイオキシンなどが養殖魚に含まれている傾向にあることも指摘されているところをみると、どちらにも有害物質の摂取のリスクは付きまといます。

魚が育った環境は水銀量や汚染物質の含有量を大きく左右します。特に北太平洋で育った魚は水銀含有量が多い傾向に。以前の記事を参考にしてみてくださいね。

【関連記事】「魚選びは慎重に。極力避けるべき魚TOP5。
 

 

ゲノム編集の養殖魚ってどうなの?

京都大と近畿大により共同で開発されたゲノム編集技術を使用したゲノム編集マダイが、国内での流通が可能となったというニュースが近年話題となりました。遺伝子組み換えとは異なり、外部から遺伝子を組み込むわけではなく、特定の遺伝子を狙って破壊する品種改良の一種であるため安全性は従来の品種改良と同等とされていますが、遺伝子編集された魚は最大60%多くの筋肉を成長させることが可能となります[#]Houser, Kristin. 2021. “Gene-Edited Fish Grow up to 60% More Muscle.” Freethink Media. October 1, 2021. https://www.freethink.com/science/gene-edited-fish. 。現在の時点では健康リスクを報告した明確な研究結果はありません。今後、ゲノム編集養殖魚を含んだ養殖魚の市場シェア率は増える一方であることは予想されます。geefeeでは今後もこのゲノム編集養殖魚を注視したいと思います。

 

まとめ~養殖魚と天然魚。どれ位違うの?~
魚を多く消費しているにも関わらず、あまり日本では注視されることのない養殖魚と天然魚の相違点。オメガ3、オメガ6の含有量の観点からみると、少々値が張ったとしても天然魚を選ぶ方が得策ではありますが、どちらを選んでも水銀などの重金属のリスクを回避するのは難しいのが実情。この魚の水銀問題は日本ではほとんどトピックに挙がりませんが、例えばFDA(アメリカ食品医薬品局)は、カジキマグロなどの水銀含有量がダントツで多い魚を食べないことが推奨されているくらい欧米では深刻な問題なのです[#]“[FDA Mercury Screening Values for Fish Categories].” n.d. Accessed January 17, 2022. https://wildplanetfoods.com/wp-content/uploads/2021/08/FDA-EPA-Advice-Ad.... 。スーパーなどで手に入るのであれば水銀含有量の比較的少ない天然のイワシから適切なオメガ3、オメガ6を摂取するようにするのが最善でしょう。

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