養殖魚と天然魚の大きな違いの1つが抗生物質。
余計な抗生物質の摂取は極力避けるべきということは以前の記事でもお伝えしましたが、養殖魚にも感染症や病気予防を目的とした抗生物質の使用が、直接注入及び水中に分散させた形で使用されています[#]Oaklander, Mandy. 2014. “There Are Antibiotics In Your Fish.” Time. October 22, 2014. https://time.com/3531828/antibiotics-fish-seafood/. 。
チリ産のサーモンの抗生物質年間使用率が、抗生物質の使用が厳しく制限されているノルウェーに比べて530倍にものぼるということは以前の記事でもお伝えした通り、産地によってその使用量は大きく異なります。日本が多く輸入している産地国で抗生物質使用量が高いとされる国は[#]“日本が輸入(ゆにゅう)しているおもな魚や魚以外の水産物の輸入量についておしえてください。.” n.d. Accessed January 17, 2022. https://www.maff.go.jp/j/heya/kodomo_sodan/0607/03.html. 、
・中国 マグロ・カジキ類/イカなど
・インド エビ
・ベトナム エビ、イカ
この3か国だけで水産養殖における世界の抗菌薬消費量の約74%を占め、アジア太平洋全域では、93%とアジアでの抗生物質のシェアが圧倒的に多いのです[#]Schar, Daniel, Eili Y. Klein, Ramanan Laxminarayan, Marius Gilbert, and Thomas P. Van Boeckel. 2020. “Global Trends in Antimicrobial Use in Aquaculture.” Scientific Reports 10. https://doi.org/10.1038/s41598-020-78849-3. 。また、この消費量は2030年までに33%増加するということが予測されているため、その健康への悪影響が懸念されています。
インドでの水質調査では、100%の養魚場とエビ養殖場で危険なレベルの鉛とカドミウムが検出され、この水質悪化による養魚の感染症予防のために抗生物質を多用しているという悪循環が報告されています[#]Pandey, Ashish. 2021. “Study Finds Hazardous Levels of Insecticides, Antibiotics in Fish, Shrimp Farming in 10 States.” India Today. January 15, 2021. https://www.indiatoday.in/india/story/study-finds-hazardous-insecticides.... 。また、未承認の抗生物質を使用して養殖された中国産のナマズ、エビ、ウナギ等の5種類の養魚が、アメリカのFDA(米国食品医薬品局)により2007年に輸入が禁止。この未承認の抗生物質の1つは、薬剤耐性菌を増やす可能性があるフルオロキノロンで、日本では使用が許容されています。

スーパーなどで頻繁に見かけるチリ産のサケが抗生物質の問題で注目されがちですが、アジア諸国での養魚も結構な量の抗生物質が使用されているのはあきらか。医師からの処方や家畜などから摂取する抗生物質と同様に、魚からも極力体に取り入れないように心がけたいものです。
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