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輸入食品だけでない、国産品でも検出例のあるマイコトキシン(カビ毒)の健康リスク。
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輸入食品だけでない、国産品でも検出例のあるマイコトキシン(カビ毒)の健康リスク。

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・アレルギー疾患などの深刻な病気を引き起こすと言われているマイコトキシンの毒性
・国産品でも検出例のあるアフラトキシン、パツリン、デオキシニバレノール
・一度食物で産生されると調理してもなかなか除去できないカビ毒
 

 

特定の食品に含まれていたり、室内の見えないところで発生していたりと非常にやっかいなカビ。湿度が高い日本ではカビは発生しやすいですが、特に健康面で注視したいのが以前の記事でもお伝えした体に有害なマイコトキシン(カビ毒)です。現在300種類以上のマイコトキシンが報告されていますが、日本で規制対象となっているのが、総アフラトキシン、アフラトキシンM1、デオキシニバレノール、パツリンの4種類。そのほとんどが海外からの輸入食品に含まれていると言われていますが、実は国産品からも検出されている例が報告されています。今回は、このマイコトキシンが体に与える悪影響と、国産品だからといって決して安心できない食物やカビ毒の種類にフォーカスしていきます。

 

マイコトキシンの毒性とは?

カビ(真菌)の二次代謝産物として産生されるマイコトキシン(カビ毒)。暖かく湿った条件下で成長し、穀物、ナッツ、香辛料、ドライフルーツ、リンゴ、コーヒー豆など、さまざまな作物や食品に存在します。その種類は300種類以上存在し、アフラトキシン、オクラトキシンA、パツリン、フモニシン、ゼアラレノン、ニバレノール/デオキシニバレノールなどが食品中に潜み、おう吐、腹痛、下痢などの急性毒性をはじめ、長期にわたり摂取することで免疫不全やガン、アレルギー疾患などの深刻な病気を引き起こすと言われています[#]“Mycotoxins.” n.d. Accessed October 25, 2021. https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/mycotoxins. 。特にアフラトキシンは発ガン性物質としてIARC(国際がん研究機関)によって最も悪い評価のグループ1に属している非常に危険なカビ毒です。

 

アフラトキシン

自然毒の中で最強と呼ばれているくらいその毒性が強いアフラトキシン。上記で述べたマイコトキシンの持つ健康リスクが懸念される最も避けるべきカビ毒の一つです。熱帯及び亜熱帯地域に分布し、従来は日本の気候条件では汚染されないと考えられていたアフラトキシン。東京都福祉保健局は、アフラトキシンが検出されたものすべてが輸入品で国産品からは検出されていない、と発表しており、国産品は比較的安心であると考えられてきました。しかし、日本の多くの地域の土壌からアフラトキシン産生菌が確認され、ここ数十年国内産の食品のアフラトキシン汚染の調査なども実施されています[文献]。その結果、以下の2種類の国産品から検出されたことが報告されています。

 

黒糖
46検体中、鹿児島産の黒糖12検体から最大値 2.5µg/kg(基準値: 10 µg/kg)が検出[#]“[食品中のアフラトキシン含有量調査].” n.d. Accessed October 25, 2021. https://www.pref.kagoshima.jp/ad08/kurashi-kankyo/kankyo/kankyohoken/sho....  [#]“[食品安全に関するリスクプロファイルシート ].” n.d. Accessed October 25, 2021. https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/risk_analysis/priority/pdf/17022....

 

国産米
農林水産省の報告によると、2011年に国内産(宮崎)の米から基準値:10 µg/kgの7倍が検出[#]“食品のかび毒に関する情報.” n.d. Accessed October 25, 2021. https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/risk_analysis/priority/kabidoku/.  [#]“[日本における疲労の現状と抗疲労トクホの可能性].” n.d. Accessed October 25, 2021. http://www.nposfss.com/data/kikan02.pdf.

 

 

また、懸念すべきはカビが生えてしまったトウモロコシや大麦などの飼料に含まれるアフラトキシンを摂取した家畜から得る乳にもアフラトキシンが含まれている可能性があるという点。ある調査では、微量ながらも牛乳からアフラトキシンが検出されています。とは言え、飼料中のアフラトキシンの低減対策は行われていますので、基準値を超えることもなく安全性は比較的高いと言えますが、そもそもの牛乳による健康リスク及びこのアフラトキシンの摂取リスクを考慮すると、牛乳を積極的に摂取することが果たして賢い選択なのかを疑ってみてもよいでしょう。
 

 

パツリン

IARC(国際がん研究機関)では、グループ3(ヒトに対する発ガン性について分類できない)に属しているパツリンは、アスペルギルス、ペニシリウム、 ビソクラミスといった種類のカビによって生成されるマイコトキシンです。発ガン性はないとされていますが、その摂取による遺伝子毒性や吐き気、胃腸障害をはじめ、動物の研究では、肝臓、脾臓、腎臓の損傷、免疫系への毒性、精子数の減少など多くの症状が報告されています[#]“Website.” n.d. https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/mycotoxins 。パツリンが検出される食品は、主に果物や穀物。特に腐ったリンゴやリンゴジュースなどのリンゴ製品で検出例が多発。食品の腐りの部分にパツリンが発生するため、腐った部分を取り除くことでパツリンの含有量が減少しますが、完全に除去することは難しく、リンゴジュースなどから検出例があるのはこのため。損傷した果物を使用したフルーツジュースなどは注意が必要です[#]“Patulin and Human Health.” n.d. Accessed October 25, 2021. https://www.foodfocus.co.za/home/Industry-Topics/food-safety/Patulin-and.... 。このパツリンですが、国産のリンゴからも検出されており、リンゴジュースからは最高値21μg/kg(基準値50μg/kg)が検出されています。日本の気候条件でも産生されやすく、特に、生鮮果物として出荷できない傷んだリンゴなどで作られることの多いジュース類は要注意。また、国産果汁100%と記載されたブドウジュースからもパツリンが検出されています[#] “[国内で起きるカビ毒汚染の実態と防御].” n.d. Accessed October 25, 2021. https://www.jstage.jst.go.jp/article/myco/58/2/58_2_129/_pdf. 。海外産、国産ともにこのパツリンの摂取リスクがある可能性がありということは知っておくべきです。

 


 

 

デオキシニバレノール

主に小麦や大麦などの穀類に発生するデオキシニバレノールは、日本で最初に発見されたカビ毒の一種。アフラトキシンのような発ガン性はないとされていますが、多量の摂取により胃腸や免疫系、リンパ組織への悪影響を与えるだけではなく[#]“Risk Assessment of Dietary Deoxynivalenol Exposure in Wheat Products Worldwide: Are New Codex DON Guidelines Adequately Protective?” 2019. Trends in Food Science & Technology 89 (July): 11–25. 、アミノ酸の一種であるトリプトファンの取り込みを阻害し、心と脳の栄養と言われている神経伝達物質のセロトニンの合成を低下させる可能性が示唆されています[#]“Risks to human and animal health related to the presence of deoxynivalenol and its acetylated and modified forms in food and feed” n.d. Accessed October 25, 2021. https://efsa.onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.2903/j.efsa.2017.4718. 。国内産、国外産の両者の小麦におけるデオキシニバレノールの検出率は基準値以下であるものの平均すると基準の80%程度と比較的高く、少なからずほとんどの小麦に微量ながら含まれていると言われています[#]“[日本の市販食品におけるデオキシニバレノール,T-2 トキシン,HT-2 トキシン及びゼアラレノンの汚染実態].” n.d. Accessed October 25, 2021. https://www.jstage.jst.go.jp/article/myco/64/1/64_63/_pdf/-char/ja. 。小麦を使用したベビーフードから基準値以上のデオキシニバレノールが検出されたという例があるのに加え[#] “[食品中のデオキシニバレノールの規格基準の設定について].” n.d. Accessed October 25, 2021. https://www.mhlw.go.jp/content/11121000/000677175.pdf. 、低濃度でも長期間のデオキシニバレノールの摂取は、子供や健康弱者の体重減少や免疫力の低下を引き起こす可能性があるため注意が必要です[#] “Fusarium Asiaticumにおけるデオキシニバレノール産生調節機構.” n.d. Accessed October 25, 2021. https://www.naro.go.jp/project/results/4th_laboratory/nfri/2018/nfri18_s....

 


 

 

調理してもなかなか除去できないカビ毒

残念なことに、一度食物で産生されたカビ毒は、調理しても完全に除去することは不可能と言われています[#] “[アフラトキシン~カビが産生する発がん物質~.” n.d. Accessed October 25, 2021. https://www.seikankensa.co.jp/eiseinews/documents/50-1802eiseinews.pdf. 。炒めてもカビ毒の残留率は約79%。茹でても約84%。210度の高温及び60分間の調理でもほとんど減少しません。カビ毒は耐熱性がとても強いのです。また、よくパンなどで産生されるアオカビなどは肉眼で見えますが、カビ毒自体は肉眼や匂いでは確認できないため、カビ毒が含まれている可能性の高い食品を避けるしか方法はないと言われています。

 

まとめ~輸入食品だけでない、国産品でも検出例のあるマイコトキシン(カビ毒)の健康リスク。~

外国産の食品が注目されがちなカビ毒リスクですが、特定の国産品からもカビ毒が検出されている例もあるので、国産品だからといって完全に安心できるわけではありません。正直、すべてのカビ毒を食品から完全に取り除くことは不可能ではありますが、カビ毒が体に与える影響を考慮すると、極力体に取り入れるべきではないのは明らか。今回の記事でフォーカスした食品などを積極的に食べている人は、少々意識的に減らすようにしてみても良いかも。特に、フルーツを使用したジュースなどの加工食品などは、カビ毒を含めそもそもの果糖や残留農薬による健康リスクも考慮すると、毎日ガブガブ飲むようなものではないのです[関連記事:食べ方次第で健康にマイナスにもなる?健康的なフルーツの食べ方]。また、牛乳の必要性を疑問視した記事でも説明した通り、さまざまな健康リスクがあると言われている牛乳を健康に良いと思って積極的に飲むのはおかしい、という結論に至ります[関連記事:あなたは牛乳が体に良いという神話をまだ信じてませんか?]。以前に掲載した「食べ物に含まれるカビ毒と生体アミンの基礎知識」を参考にカビ毒が多く含まれている食品も併せて見直してみてくださいね。

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