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ファスティングをしなくても実践できる。細胞のリサイクル「オートファジー」の活性化。
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ファスティングをしなくても実践できる。細胞のリサイクル「オートファジー」の活性化。

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・細胞のリサイクル、オートファジーの利点とは?
・弊害も考えられるファスティングによるオートファジー活性化
・ァスティングを省いてオートファジーを活性化する方法

 

私たちの体は複雑な構造と機能を持った細胞でできています。その種類は約200種類にも及び、成人男性の体にはなんと約30兆もの細胞が存在するいると言われています[#]Sender, Ron, Shai Fuchs, and Ron Milo. 2016. “Revised Estimates for the Number of Human and Bacteria Cells in the Body.” PLoS Biology 14 (8): e1002533. 。この細胞は絶えず廃棄と再生を繰り返しますが、その過程で古い細胞のさまざまな成分が代謝、再利用されます。こうやってより健康的な細胞構造を構築する細胞リサイクルのプロセスがギリシャ語で「自食」を意味するオートファジーです。このオートファジーを活性化させる方法の1つにファスティング(断食)がありますが、これは多くの人にとってハードルが高いもの。今回は、ファスティングを実践せずにオートファジーを活性化する方法をお伝えしていきます。

 

オートファジーとその利点とは?

細胞内で廃材となった脂質やたんぱく質、古いミトコンドリアなどの細胞内の小器官を自らお掃除してリサイクルしてくれる仕組みがオートファジー[#]Glick D, Barth S, Macleod KF. Autophagy: cellular and molecular mechanisms. J Pathol. 2010; 221(1):3-12. PMCID: 299019 。このオートファジーが正常に機能しないと体に老廃物が蓄積され、老化の原因やエネルギー代謝の中枢でもあるミトコンドリアの機能不全などに繋がると言われています[関連記事:ミトコンドリアを増やしてキレイに長生きする方法]。このオートファジーの主な原動力となるのが細胞ストレス。ファスティングなどにより栄養素の供給がストップしたり、激しい運動などその他のストレスがかかることでオートファジーの活性化が促進されます。しかし、このオートファジーの分野には解明されていないことが多々あると言われています。

 

 

オートファジーが活性化されると以下のような利点が得られる可能性があります。

 

老化細胞の除去

細胞には寿命があります。使い古された細胞が体内に蓄積されると、慢性炎症や腎疾患、免疫機能障害、神経変性などの疾患の原因となりうる可能性があります[#]Beck, Jessica, Casmir Turnquist, Izumi Horikawa, and Curtis Harris. 2020. “Targeting Cellular Senescence in Cancer and Aging: Roles of p53 and Its Isoforms.” Carcinogenesis 41 (8): 1017–29. 。常に新しい細胞をエネルギーとして活用することで、老化も含め慢性疾患や炎症などから体を保護できるのではないかと考えられています[#]Kang C, Elledge SJ. How autophagy both activates and inhibits cellular senescence. Autophagy. 2016;12(5):898-9. PMCID: 4854549  [#]Fan YJ, Zong WX. The cellular decision between apoptosis and autophagy. Chin J Cancer. 2013; 32(3):121-9. PMCID: 3845594

 

ミトコンドリアやタンパク質のリサイクル

古くなり機能不全となったミトコンドリアを分解して代謝機能が優れた新しいミトコンドリアを生成します[#]Patergnani S and Pinton P. Mitophagy and mitochondrial balance. Methods Mol Biol. 2015; 1241: 181-94. PMID: 25308497 。ミトコンドリアを最適化することはさまざまな健康維持と関連しています。

【関連記事】「ミトコンドリアを増やしてキレイに長生きする方法

また、古くなった体内のタンパク質のお掃除をするだけではなく新たなタンパク質を生成する役割もあります。成人男性の食事によるタンパク質の摂取量が60g~80gなのに対し、実際に体内で新たに生成されているたんぱく質は約200g。オートファジーによってタンパク質がリサイクルされることでこの差が補われています[#]Mizushima, N. 2005. “The Pleiotropic Role of Autophagy: From Protein Metabolism to Bactericide.” Cell Death and Differentiation 12 (2): 1535–41. 。よって、後で詳しく説明しますが、たんぱく質の摂取のし過ぎは体内でのたんぱく質の生成のためのオートファジーの必要性が減ることで、オートファジーが抑制される原因となりえます。

 

ウイルス感染細胞を撃退

細菌や寄生虫、酵母など他の病原体とは異なる特性を持ったウイルスは細胞に侵入し、代謝や細胞遺伝子に悪影響を与えます。免疫力を上げることでウイルス発現を止めることはできますが、ウイルスそのものを取り除くことはできません。オートファジーの活性化によりウイルス感染した細胞の活動を減らすることが期待できます[#]Dong X, Levine B. Autophagy and viruses: adversaries or allies?. J Innate Immun. 2013;5(5):480-93. PMCID: 3790331

 

ファスティングはオートファジー活性化への近道。でも弊害も。

日本語で断食と呼ばれているファスティングにはさまざまな方法がありますが、一般的に実践しやすいのが16時間程度食事をとらないプチ断食。体に入る栄養分をストップすることで、体内に蓄えられた糖質がエネルギーとして消費され、体が脂肪をエネルギー源として代謝しはじめます。いわゆるケトジェニックダイエットなどでもおなじみのケトーシス状態です[関連記事:劇的な効果があると話題のケトジェニックダイエットがもたらす体の変化と注意点]。このプチ断食により、脳の活性化や体重減少などの効果が期待できますが、オートファジーの活性化を促進するとも言われています[#]Mattson MP, Longo VD, Harvie M. Impact of intermittent fasting on health and disease processes. Ageing Res Rev. 2017;39:46-58. 。しかし、ある専門家は、より長いファスティングはオートファジーをより活性化させる可能性があるが、オートファジーを活性化させる最適なファスティング期間を特定する決定的な研究結果はない、としています。オートファジーの活性化を促進するために実際にどれくらいのファスティング期間を実践して、どれくらいの効果が得られるかの確証がない上に、ファスティングによって起きる頭痛などのケトフルーと同様の症状や、便秘や無気力などの副作用もあるので[#]Harvard Health Publishing. n.d. “4 Intermittent Fasting Side Effects to Watch out for.” Accessed January 18, 2021. https://www.health.harvard.edu/staying-healthy/4-intermittent-fasting-si.... 、敢えてファスティングを取り入れるのは少々リスキー。次のセクションでは、ファスティングを実践しないでオートファジーを活性化させる方法をお伝えします。

 

ファスティングを省いてオートファジーを活性化する方法。

ファスティングはオートファジーの活性化の近道ですが、ファスティングに抵抗があるある人でも以下のような方法でオートファジーを活性化することができます。

 

ケトジェニックダイエットのタンパク質制限

タンパク質は、筋肉の増強、骨密度等、体の健康には不可欠な栄養素ですが、タンパク質を摂りすぎると、糖質に代わるエネルギー源であるケトン生成がブロックされmTOR経路が活性化される可能性があります。このmTOR経路は、哺乳類などの動物において細胞内シグナル伝達に関与するタンパク質キナーゼの1種で、mTOR経路が活性化されるとオートファジーが抑制され、休止状態になるとオートファジーが活性化すると言われています[#]Hanjani, NA, Vafa, M. Protein restriction, epigenetic diet, intermittent fasting as new approaches for preventing age-associated diseases. Int J Prev Med. 2018; 9: 58. PMID: 30050669  [#]Zarifi, SH, Bagherniya, M, Sahebkar, A. Restricted calorie intake and autophagy: is there a link? Clinical Nutrition 。よって、総カロリーの20%をタンパク質由来で摂取する食事法のケトジェニックダイエットは、オートファジーを活性化するための優れた方法です。ここで大切なのが、ケトジェニックダイエットの際の食事の質。ただ単純にタンパク質を控えて、ファーストフードや加工食品、精製油などの低質の脂質で補っても効果を得るどころか体に悪影響を与える結果に[関連記事:「ダーティケト」の問題点から学ぶ食品添加物の害。]。食事の質には十分に注意をしましょう。

 

高強度インターバルトレーニング(HIIT)

負荷の高い高強度インターバルトレーニング(HIIT)のようなトレーニングは、細胞にストレス環境を与えオートファジーの活性化を促進します。また、オートファジーだけではなく、筋肉組織の修復と保存、脂肪燃焼を活性化するヒト成長ホルモン(HGH)が分泌されやすくなることが研究で分かっています[#]Boutcher SH. High-intensity intermittent exercise and fat loss. J Obes. 2010; 2011:868305. PMCID: 2991639   [#]Cantó C, Jiang LQ, Deshmukh AS, et al. Interdependence of AMPK and SIRT1 for metabolic adaptation to fasting and exercise in skeletal muscle. Cell Metab. 2010; 11(3):213-9. PMCID: 3616265

ただ、トレーニングのし過ぎには注意。過度なHIITは、ストレスホルモンのコルチゾールレベルが増え、体がストレスに晒される状態が続くことになります。また、HIITによりmTORを活性化させるという研究結果も[#]Cui, X., Y. Zhang, Z. Wang, J. Yu, Z. Kong, and L. Ružić. 2019. “High-Intensity Interval Training Changes the Expression of Muscle RING-Finger Protein-1 and Muscle Atrophy F-Box Proteins and Proteins Involved in the Mechanistic Target of Rapamycin Pathway and Autophagy in Rat Skeletal Muscle.” Experimental Physiology 104 (10). https://doi.org/10.1113/EP087601. 。その他に実践している運動量によって個人差はありますが、1回20分程度のセッションを週に2回程度で十分だと言われています[#]“Why Two 20-Minute HIIT Sessions Per Week Is Plenty.” 2019. May 6, 2019. https://www.wellandgood.com/hiit-workout-routine/.

【関連記事】「最短時間で最大効果を出す運動法-高強度インターバルトレーニング(HIIT)

 

 

良質な睡眠

良質な睡眠が健康に良いというのは周知のこと。でも、なかなか実践できずに睡眠健康を後回しにしている人も多いのでは?健康的な睡眠サイクルや概日リズムはオートファジーとも深い関りがあります。睡眠不足は、神経細胞のオートファジーの欠如を引き起こし、代謝恒常性と様々な疾患の要因になることが分かっているため[#]Ma D, Li S, Molusky MM, Lin JD. Circadian autophagy rhythm: a link between clock and metabolism?. Trends Endocrinol Metab. 2012; 23(7):319-25. PMCID: 3389582  [#]Chauhan, AK. Association between autophagy and rapid eye movement sleep loss-associated neurodegenerative and patho-physio-behavioral changes. Sleep Medicine, Volume 63, November 2019, Pages 29-37. Link Here 、7時間~9時間程度の適切な睡眠時間を確保することを心掛け、睡眠の質をあげるようにしましょう。

【関連記事】「ビタミンDの生成だけじゃない。日光浴のスゴイ健康メリット

 

温冷療法

免疫力を高める記事でも紹介しましたが、温水と冷水を交互に浴びる温冷療法は、急激な温度変化により細胞を刺激しオートファジーの活性化を促進します[#]Penke B, Bogár F, Crul T, Sántha M, Tóth ME, Vígh L. Heat Shock Proteins and Autophagy Pathways in Neuroprotection: from Molecular Bases to Pharmacological Interventions. Int J Mol Sci. 2018; 19(1):325. PMCID: 5796267 。自宅ではシャワー、公共のお風呂が好きな人は赤外線サウナの後に水風呂に入るなど、簡単にできますので試してみてください。

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ポリフェノールやクルクミンの摂取

植物細胞の様々な生理作用を助ける働きを持つ有機化合物の総称であるポリフェノールにはオートファジーの活性化の促進が期待できます[#]“Autophagy, Polyphenols and Healthy Ageing.” 2013. Ageing Research Reviews 12 (1): 237–52. ポリフェノールの種類は無数にありますが、レスベラトールやマキベリーに含まれるアントシアニンをはじめ、玉ねぎに含まれているケルセチン、ウコンに含まれているクルクミン、緑茶のカテキンなどもポリフェノールです。以前の記事を是非参考に、ポリフェノールの摂取を意識してみてください。

 

 

まとめ~細胞のリサイクル「オートファジー」の活性化。~

ファスティングは、さまざまな健康効果に加えオートファジーの活性化に有意に働く可能性がありますが、人によっては実践するのが困難な場合も。敢えてファスティングを避け、ケトジェニックダイエットを中心に、睡眠の改善はもちろんのこと高強度インターバルトレーニング(HIIT)やポリフェノールを意識的に摂取してみるのも良いかも。まだまだ解明されていないオートファジーのメカニズムですが、活性化させる方法のほとんどは健康へ好影響を与える内容ばかりなので、是非参考にしてみてくださいね。
 

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