食品に含まれているクエン酸には健康に良いものと悪いものの２つのタイプがあることを知っていましたか？

疲労回復や美容効果、抗菌作用があると言われているクエン酸は、さまざまな食品や掃除用品、パーソナルケア用品などに含まれている化学物質です。なんとなくクエン酸は健康に良いとか、クエン酸は柑橘系のフルーツなどの天然由来というイメージが先行していることもあり、食品の成分表示に記載されているクエン酸は全て天然由来のものだと思われがちですが、実は、私たちが加工食品から摂取しているクエン酸のほとんどは天然由来ではないのです。今回は、意外と知られていないクエン酸について深堀りしていきます。

天然由来と人工の2種類あるクエン酸

レモンやオレンジやグレープフルーツなどの柑橘類に含まれる天然有機化合物であるクエン酸。しかし、実際に食品添加物として使用されるクエン酸は人工のものがほとんどなのです。使用目的は腐敗防止や変色防止、PH調整剤や味の調和やフルーツ系の酸味を付与するための酸味料など。清涼飲料水、飴などのお菓子、ジャムなど、特に柑橘系の風味のある加工食品に含まれています。人工のクエン酸は天然由来のクエン酸と分子構造が同じため安全性も高いと言われていますが、人工のクエン酸の製造過程には少々問題があると言われています^[1]。

カビで発酵させて製造されたクエン酸とは？

海外では、人工的に製造されたクエン酸はMCA（manufactured citric acid）とも呼ばれていますが、加工食品などに含まれているほとんどのクエン酸はこのMCA。デンプンあるいはトウモロコシ由来の糖をコウジカビの一種であるアスペルギルスニジェルで発酵させて生産されており、コストがとても安いのです。アスペルギルスニジェルと言えば、黒カビ。パンやピーナッツなどの食品に生えるカビで、アレルゲンであるとともにオクラトクシンAという毒性の高いカビ毒を発生することで知られています。しかし、アメリカのFDA(アメリカ食品医薬品局)は、このアスペルギルスニジェル由来のクエン酸がアレルゲンになりえるという主張を退けた形でその安全性を立証しないままGRAS(安全基準合格証)を与え物議を呼んでいます^[2]。MCAの世界生産の約99%はこのアスペルギルスニガー由来。約70％が食品、約20％が医薬品やパーソナルケア用品に使用されているので、私たちが手にしているクエン酸が含まれた商品のほとんどはこのアスペルギルスニジェル由来である可能性が高いと考えて良いでしょう。フルーツを想起させるクエン酸とは大きくイメージが異なりますよね。

人工のクエン酸による健康リスク

この人工のクエン酸の長期使用による安全性を確認する研究は不足していますが、MCAを摂取したことで以下のような症例が報告されています^[3] [4]。

・関節の腫れや筋肉痛
・呼吸困難や活力の低下
・精神的疲労
・過敏性腸症候群

これらの症状はレモンなどから得た天然のクエン酸からは発生しなかったということが報告されています。

また、人工のクエン酸の製造過程で黒カビのアスペルギルスニジェルはろ過されると言われていますが、人によっては過敏症やアレルギー反応を起こす可能性も指摘されています。食品添加物が多く含まれた加工食品が増加傾向にある近年、食物アレルギーの発生率も増加傾向にあります。人工のクエン酸のような合成物質が、体の炎症やアレルギー性疾患、自己免疫疾患を誘発している可能性は否定できませんので、人工のクエン酸の摂取は注意が必要です。
 

クエン酸による健康への良い効果。

上記のようにMCAは健康リスクが疑問視されていますが、クエン酸自体は、体内でも合成され健康には必要不可欠な物質。以下のような働きを持ちます。

・フリーラジカルによる損傷から体を保護^[5]
・エネルギーの代謝を促進^[6]
・亜鉛の吸収を高める^[7]
・腎臓結石から保護^[8]

クエン酸に減量効果があるとか乳酸を分解する効果があるというのは？？

また、脂肪を燃焼するという効果が一時期ネットなどで流行し、その効果に関連したダイエット商品などが販売されていますが、減量に関するエビデンスはほとんどありません。クエン酸に減量効果を期待するのは少々早とちりかも。

また、筋トレや運動中に筋肉内で蓄積される乳酸は、運動後の疲労や筋肉痛の原因となる疲労物質と言われてきました。この乳酸を分解する働きを持つのがクエン酸で、疲労回復効果があると言うことが通説でしたが、近年の研究では、そもそもこの乳酸自体は、疲労や筋肉痛と関係はなく、むしろ運動パフォーマンスを向上させるためのエネルギーとなることが多くの専門家によって指摘されています^[9] [10]。体内の乳酸値は、運動後の30分～60分程度で正常に戻るので、運動後に乳酸値を抑えるためにわざわざクエン酸を摂取する必要性はあまりないのです。

まとめ～食品に含まれているクエン酸には健康に良いものと悪いものの２つのタイプがあることを知っていましたか？～
健康食品として宣伝されているクエン酸ですが、そのほとんどはカビから生産された人工のもので天然のものではありません。その安全性は各公的機関では承認済みではありますが、人によってはアレルギー性疾患、自己免疫疾患が誘発される恐れも。日々の体調不良の原因になっている可能性は否定できません。また、クエン酸が含まれた加工食品には砂糖や人工甘味料や香料などその他多くの食品添加物が含まれています。減量や疲労回復効果についてもあまり期待できません。一方、天然のクエン酸は健康維持に必要なのも事実。摂取するのであれば、レモンの絞り汁を料理に使うなど天然のものを摂りましょう。