効果が出るのは1日何杯?
コーヒーは、さまざまな機能性を持つものだとあらためて驚かされますが、それではどの位飲めばその効果が現れるのでしょうか。あるいは、飲みすぎるとどうなるのでしょうか。
コーヒーとあらゆる死因での死亡リスクの関係を調べた研究では、コーヒーを飲まない人と比べて、コーヒーを1日3~5杯飲む人の死亡リスクは15%低いとされています。一方、5杯以上飲む場合のリスクが低下する率は12%となり[#]Ding, M. et al., 2015. Association of Coffee Consumption With Total and Cause-Specific Mortality in 3 Large Prospective Cohorts. Circulation, 132(24), pp.2305–2315. 、必ずしも飲めば飲むほどリスクが下がるとは言えないことがわかります。
アメリカでは、「米国人の食生活ガイドライン2015年版」で初めてコーヒー摂取への指針が提示されました。これによると、健康に害なく飲めるのは1日5杯(カップ)までとしています。カフェインの量でいうと、約400㎎ということになります[#]the 2015 Dietary Guidelines Advisory Committee, 2015. the Scientific Report of the 2015 Dietary Guidelines Advisory Committee 。
さて、ここでいうカップですが、多くの研究では1杯を5~8オンス(約150~240ml)でカフェイン量は約100㎎。アメリカの一般的なコーヒーショップでは、スモールサイズは大体12オンス(約360ml)、ラージサイズには20~24オンス(約600~720ml)入っているそうです。
ご参考までに、日本のスターバックスであれば(http://www.starbucks.co.jp/howto/store/order.html)、スモールサイズが240ml、トールサイズが350ml、グランデサイズが470ml、ベンティサイズが590mlだそうです。スモールサイズがちょうどコップ1杯程度と考えると良いでしょう。
前述のように、たくさん飲めば飲むほど健康効果が上がるというわけではありません。カフェインの摂り過ぎは、心の安定や睡眠パターンを乱す恐れもあります。また極端な例ですが、急に1リットル以上飲んで、動悸や嘔吐、急激な筋力の低下など重篤な副作用が出た例もあります[#]Chiang, W.-F. et al., 2014. Rhabdomyolysis induced by excessive coffee drinking. Human & experimental toxicology, 33(8), pp.878–881. [#]Abe T, Kikuchi A, Hamauchi H, Nihira A, Mizobuchi M, Sako K, 2013. A case of hypokalemic myopathy induced by excessive drinking of coffee and cola. 北海道脳神経疾患研究所医誌, 12, pp.53–55. 。
カフェインが多く含まれる栄養ドリンクやカフェインサプリメントを摂取していない限り、コーヒーだけでこうした重篤な症状が起こることはおそらくないでしょうが、カフェインの許容量は人それぞれのため、摂りすぎには用心に越したことはありせん。
妊婦さんやお薬を飲まれている方は特に要注意
妊娠している場合は、カフェインの摂取量には特に注意が必要です。『BMCメディスン』誌に掲載されたノルウェーの研究では、妊婦がカフェインを一日に100mg以上摂取すると、ほとんど摂取していない妊婦と比べて低体重で赤ちゃんが生まれてくるリスクが増えることを指摘しています[#]Chen, L.-W. et al., 2014. Maternal caffeine intake during pregnancy is associated with risk of low birth weight: a systematic review and dose-response meta-analysis. BMC medicine, 12, p.174. 。
その他にも、流産や障害を持って生まれてきたリ、乳児期の突然死症候群といったリスクの増加も報告されています[#]Ford, R.P.K. et al., 1998. Heavy caffeine intake in pregnancy and sudden infant death syndrome Commentary. Archives of disease in childhood, 78(1), pp.9–13. [#]Infante-Rivard, C. et al., 1994. Fetal Loss Associated With Caffeine Intake Before and During Pregnancy. Obstetrical & gynecological survey, 49(6), pp.375–376. 。
また、コーヒーのカフェインで相互作用を起こしてしまう医薬品もあります。薬の効果が過剰になってしまったり、副作用が起こることもありますので、薬を飲まれていて心配な方は医師や薬剤師の方にもご相談くださいね。
カフェインレスでも大丈夫?
カフェインに弱い人でもコーヒーを楽しみたいという人は多いでしょう。そんな人のためデカフェ(カフェインレス)が用意されていますよね。では、デカフェからも健康効果は得られるのでしょうか。
結論から言うと、コーヒーの健康効果はデカフェの場合には薄まってしまうようです。ラベルにカフェインレスと記載するためには、カフェインを90%取り除く必要があり[#]全国公正取引協議会連合会, 2016. コーヒー飲料等の表示に関する公正競争規約・施行規則 対照表, Available at: http://www.jfftc.org/rule_kiyaku/pdf_kiyaku_hyouji/010.pdf. 、そうしたことから成分の作用に影響が出ると思われます。
一部の研究によると、代謝率の増加などの機能性は、デカフェではその効果が低下するとされています[#]Zahorska-Markiewicz, B., 1980. The thermic effect of caffeinated and decaffeinated coffee ingested with breakfast. Acta physiologica Polonica, 31(1), pp.17–20. 。それは、カフェインを取り除くプロセスに原因があると考えられます。方法は幾つかあり、一般的に用いられるのが有機溶媒を使ってカフェインを除去する方法ですが、成分の損失が大きく風味も損なわれるともいわれています。
とはいえ、カフェインに弱い人や夜飲みたい場合などには、デカフェであればカフェインの影響をあまり気にせずに楽しめるかもしれません。
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飲み方はブラックがおススメ
コーヒーの効果が十分発揮され、健康を損ねないようにするには飲み方に気を付けることと、専門家はアドバイスしています。
コーヒーの健康効果を受けるにはブラックで飲むのが一番だということですが、苦みが苦手な人は、どうしても砂糖を入れ、さらにクリームやミルクも足してしまいますよね。でも、クリームやミルクを入れると、抗酸化物質であるクロロゲン酸の体内への吸収を邪魔するということです[#]Duarte, G.S. & Farah, A., 2011. Effect of simultaneous consumption of milk and coffee on chlorogenic acids’ bioavailability in humans. Journal of agricultural and food chemistry, 59(14), pp.7925–7931. 。また、砂糖をたっぷり入れてしまうと血糖値を上げ、インスリン抵抗性を増します。
さらに、今アメリカでブームになっていて、日本でも徐々に知名度が上がってきているバターとMCTオイル入りの「完全無欠コーヒー」であればブラックが苦手な人でもとても美味しく飲めますよ。
香りや味を楽しむだけでなく、疾患を予防する可能性を秘めているコーヒー。飲み過ぎに気を付けながら、心ゆくまで堪能したいものですね。
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