人間が生きていく上で必要なビタミンのひとつに、ビタミンDがあげられます。ビタミンDは、骨を作るカルシウムの吸収や代謝に重要な役割を果たしているビタミンであることは良く知られています。そのため、ビタミンDの摂取が不足すると、カルシウム吸収量が減少してしまいます。他にもものすごい数の体内機能に関わっており、その不足は深刻な体調不良につながる恐れがあります。
近年、日本人はビタミンDが不足がちであるという報告が複数されています。健康を保つのにとっても重要なビタミンDを補うにはどうしたらよいのでしょうか?
ビタミンDを得る方法は主に2通り
人がビタミンDを得るには、食べ物から摂取する方法と、日光からの紫外線を浴びて得る方法があります。ビタミンDが多く含まれている食べ物には、魚介類・キノコ類・卵等が知られています。サプリメントも多く市販されていますね。
一方、日光から紫外線を浴びてビタミンDを得るとはどういうことでしょうか?実は、皮膚に大量に含まれている7-デヒドロコレステロールという物質は、日光に含まれている紫外線を受けて、化学変化を経るとビタミンDに変換されます[1]。
多くの人は後者の方法についてあまり意識していないのでは?今回はその紫外線でビタミンDを補う方法について説明していきます。
ビタミンDはどれ位必要?
そもそも、健康を保つために必要なビタミンDの量はどのくらいなのでしょうか?
アメリカ・カナダの食事摂取基準では、食事による成人のビタミンD摂取推奨量を1日あたり15µgと定めていますが、この値は日照でのビタミンD産生を考慮しないものです[2]。つまり、食事と紫外線由来の両方のビタミンDの合計で15µg以上摂取することが望ましいとされています。
では日光はどのくらい浴びたらよいのでしょうか?
日光を浴びることとビタミンDの産生に関しては、日本国内の日照の少ない地域の冬の時期でも正午前後に2時間日光を浴びれば約7.5µgのビタミンDが産生されることを示唆するデータがあります[3]が、一般的な日本人がどのくらい日光を浴びているのかを示す信頼度の高いデータはないとしています[4]。
ちなみに、食品から摂取しているビタミンDの量は、成人で1人1日あたり7.6µgというデータがありますが、年代別に見ると40代以下ではその摂取量が少なくなっていることがわかります。

(平成26年 国民健康・栄養調査結果の概要 年齢階級別、栄養素等摂取量(1日1人あたり平均値)より)
このようなデータから、日本人は近年ビタミンDが不足していることを示す見解もあります[5]。
ビタミンDが不足すると、骨軟化症のリスクが上がる、骨量が低下する、高齢者では骨折のリスクが上がるなどの健康トラブルにつながります[6]。骨以外の様々な病気のリスクが上がることも最近の研究で明らかになってきていますが、これらについては別の記事にて。ビタミンDの補給は食事だけでなく、日光を浴びることも重要なのです。
一方、ビタミンDを摂りすぎると、高カルシウム血症、腎障害などが起こることが知られています。紫外線によるビタミンDの産生は体内で調節されるので、紫外線だけで必要以上にビタミンDが作られることはありませんが、食事については特にサプリメントの摂りすぎにはご注意を。厚生労働省は成人で1日あたりのビタミンDの食事摂取における太陽上限量を100µgとし、それ以上の摂取は避けるべき、としています[7][8]。
日光は、日々の生活の中で誰もが得る事が可能な自然の恵みです。しかし、日中の光を避けて生活すれば、その恩恵を得る事が出来ません。日中活動している人からすれば当たり前のような日光の存在。一方、皮膚癌の原因になるとか美容の観点から敵視されているのが現実。しかし、この太陽の光を浴びる事はビタミンDを体に取り込む重要な方法なのです。

適度な日光浴の方法
みなさんもご存知のように、日光に当たり過ぎ=大量の紫外線は、体に悪いと言う事が長年言われ続けてきました。日焼けの回数と皮膚がんの発症率は全くの無関係ではありませんし、大量の紫外線を受ければ体に悪影響を与えます。また、夏の暑い季節では熱中症も心配されます。しかし、体に悪影響のない範囲で太陽の光をしっかりと浴びたい!というのが本音。太陽の有害な影響を最小限に抑え、日光浴効果を最大にするために幾つかの方法とポイントをご紹介します。
- 日焼け止めを塗ることはあまりお勧めできません。ただし、長時間の屋外での活動時や個人の肌の状態によって、日焼け止めは適切に使うようにしてください。
- 窓ガラスはビタミンDの生成に必要な紫外線の波長を吸収してしまうため、窓越しでの日光浴ではビタミンDは生成されないと考えられています[9]。
- 季節や地域や時間帯などによって紫外線の量や日照時間などは変わりますが、まずは朝方の15分~20分位を目処に、週に3回程度、なるべく多くの肌を露出して直接太陽の日を浴びてみてはいかがでしょうか。ただ、人によって必要な日光量は変わりますので注意が必要。また、もともと肌が色黒か色白なのかにもよります。つまり、北半球であれば北の方にいればいるほど、色黒であればあるほど、より長めの日光浴が必要となります。いずれにせよ、目安は、日光浴の後で肌が赤く火照らない程度の時間。無理してそれ以上長い時間やってもビタミンDの生成量は増えないと言われており、重度の日焼けの恐れもありますので気を付けましょう。また、各健康関連機関・組織等が様々な日光浴の方法を提唱しています。これらの情報や今回の記事を参考に、気持ち良いと感じられる日光浴のスタイルを見つけ出してみてください。
各機関・組織のHP等に記載されているビタミンD生成に必要な日光照射時間

(国立環境研究所 https://www.nies.go.jp/whatsnew/2013/20130830/20130830.html)
【関連記事】「うつ病と深い関係が!心と脳の健康に欠かせない栄養素“ビタミンD”」
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