医学の発展により一部のガンは克服できる病気になりましたが、いまだ多くの人の命を奪う重大疾病の筆頭株です。喫煙の発ガン性はよく知られていますが、それ以外にも様々な生活習慣の要因によるガンが誘発されると考えられています。
今回は日常に潜む意外な発ガンリスクとその回避方法をご案内します。
日本人の生涯ガン患率は50%超
国立がん研究センターの最新データによれば、日本人の癌の生涯罹患率(人生のいずれかの時点で罹患する率)は男性62%、女性47%と高い割合をマークしています。日本人の男性の4人に1人、女性の7人に1人はガンが死因。様々な治療方法が開発されている現在でも、ガンはとても身近で恐ろしい病なのです。
「どうして人はガンになるのか?」の明確な答えはまだ藪の中。ガンの誘発リスクのある習慣をできるだけ排除することこそが、今の私たちにできるガンの予防法なのです。
喫煙や暴飲暴食、ストレス過多な生活、悪い食習慣、肥満、など、ガンを誘発する悪習慣が多数指摘されていますが、もっと意外なところにも発症リスクが隠れています。すべての要因を取り除くことは困難ですが、しっかりした知識を持つことで無用なリスクを減らすことができるのです。
怖い病気だからこそ、正しい知識を身につけて、ガンのリスクを遠ざけるライフスタイルを目指しましょう。
こんなことがリスクに? ガンを誘発するかもしれない意外な要因7つ
1.芳香剤
アロマの香りはリラクゼーションの強い味方。よい香りに包まれて穏やかな気分に浸ることは、心身ともによい効果をもたらします。ただし、その香りが天然のアロマであれば…の話です。キャンドルや芳香剤に使用されている合成香料のうち、シトラスの香りに使用されるリモネンはガンの発症リスクを高める可能性があると指摘されています。
リモネンが空気中に広がるとオゾンに反応して、骨髄性白血病や上咽頭がんの発症に関連性があるホルムアルデヒドを生み出します[1]。また、人工香料はホルモンを混乱させ、喘息やその他の重病につながる可能性も指摘されています。
安全にアロマの効能を楽しむには、危険な成分を含む合成芳香剤を避けることです。リモネンのほかにも、フタル酸エステルやDEP、DBP、DEHPなどの成分を含む香料にも注意しましょう[2]。トイレや自動車内など、ガンガンに合成芳香剤を利かせている人、今すぐやめることを推奨します。
また、芳香剤ではありませんが、夏にはみなさんも特に意識せず使用している蚊取り線香の煙は、肺がんのリスクを高める可能性がありますので注意が必要です[3] [4]。
2.アルコール
飲みすぎは身体に良くないことは周知の事実。しかし、アルコールがガンの発症リスクを高める科学的根拠があることを知っている人は少ないかも知れません。
2016年にデンマークの研究者がアルコールの摂取量が乳ガンの発症率と深く関わっているという研究結果を発表しました[5]。また、乳ガンのほかに、頭部や頸部の癌、食道癌、肝臓癌、結腸・直腸癌などもアルコールが関連しているそうです[6]。
アルコールがガンの誘発リスクを高めるのは、アルコール中のエタノールが代謝される際にDNAや体内のタンパク質を傷つけるアセトアルデヒドという物質に変化するからだそう。また、アルコールによって体内の酸化が進むことや、アルコールがエストロゲンレベルを上げることも好ましくない作用[7]。ガン予防にも一般的な健康生活のためにもアルコールはなるべく控え、飲むとしても適量でたしなむのが鉄則です。

3.日焼け止め
紫外線の浴び過ぎはガンのリスクにつながりますが、その紫外線をカットする日焼け止めの中にも発がんリスクが潜んでいます。日焼け止めに含まれる成分で特に注意したいのがオキシベンゾン3。有害なフリーラジカルを体内に増殖させてDNAにダメージを与える可能性があります。
ガンリスクをできるだけ避けるために、日焼け止めの商品ラベルに以下のような物質が含まれていないかを確認しましょう。
オキシベンゾン |
アミノ安息酸 |
オクチサレート |
シノキセート |
フェニルベジズイミダゾール |
ホモサレート |
アントラニル酸メチル |
オクトクレリン |
メトキシケイ皮酸エチルヘキシル |
パラベン |
エッセンシャルオイルとココナッツオイル、シアバターなどを使用して安全な日焼け止めを手作りするのもおすすめです[8]。
4.日光不足
紫外線の浴び過ぎは皮膚ガンの要因となりますが、実は日光不足もガンのリスクを高める可能性があります。カリフォルニア大学の研究者は、血中のビタミンD3が増えれば増えるほど結腸直腸ガンと乳ガンのリスクが減少するという実験結果を発表しました。ビタミンDの最大の源は太陽です。つまり、日光に当たることでビタミンDレベルが上がり、ひいてはガン予防効果が期待できるのです[9]。しかし、日光の浴び過ぎは皮膚ガンを引き起こす要因になりかねません。何事もほどほどが大切。個人差はありますが、まずは毎日15分~20分程度の直射日光を浴びることを目指しましょう。できるだけサングラスは使用せず、衣服も最低限が効果的とされています。体が喜ぶのを実感できるはず。
【関連記事】「日本人が不足しがちなビタミンDと日光との気になる関係」
5.概日リズム
起床から就寝までの概日リズムは、通常、光と暗闇に反応して形作られますが、夜に仕事をするなど昼夜逆転の生活をしていると自然な概日リズムに乱れが生じます。概日リズムをコントロールする遺伝子は腫瘍を抑える役割も担っていることから、リズムの乱れがガンを含む腫瘍の成長させる可能性があるのです。
12時間は明るいライトのもとで暮らし、残りの12時間を暗い場所で過ごしたネズミのグループと、ライトの時間をさらに8時間増やすことで明暗のリズムを乱した環境で過ごしたネズミのグループでは、後者のグループで腫瘍の成長が早まったという研究結果が報告されています[10]。
6.焦げた食品
揚げ物や焦げた食品はなぜ身体に良くないといわれるのでしょうか。ガンの発症リスクの観点から見ると理由は明確です。例えば、ジャガイモやトーストなどのでんぷん質の食べ物を高温で調理するとアクリルアミドという物質が発生します。このアクリルアミドはDNAを傷つけてガン発症のリスクを高めるとして、国際的なガン研究機関により推定発ガン物質に指定されています[11]。
しかし対抗策はあります。調理前にでんぷん質の食材を水に浸しておくとアクリルアミドの増加を抑えることができるそうです。調理前に2時間ほど水につければアクリルアミドのレベルは半分まで低下。時間のないときは切った野菜を丁寧に水洗いするだけでもアクリルアミドを23%抑えることができるそうです。でも、やっぱり揚げ物は極力避けましょうね。
また、焦げた肉も発ガンリスクを高めると考えられていますが、低温でじっくり調理することでほぼリスクが回避できます。加熱前の肉を酢や柑橘系のマリネにしたり、ターメリックやガーリック、ローズマリー[12]を利用するのも、ガンの発症リスクを抑える効果があると考えられています。
【関連記事】「揚げ物がタバコと同じくらい健康に悪いと言われる理由」

7.座る時間が長いライフスタイル
テレビを見る時間や座ったままのレクリエーションタイム、デスクワークなど、一日のうち座っている時間が長い人は発ガンリスクが高まるという研究結果が、ドイツのレーゲンスブルグ大学から2014年に発表されました。座っている時間が長ければ長いほど、子宮内膜ガンや肺ガンとの相関が見られたのです。その他の時間にどれだけ運動をしているかに関わらず、座る時間が2時間増えるごとにガンの発生リスクも向上すると報告されています[13]。
デスクワークが多い人などは、スタンディングデスクを導入したり、椅子をエクササイズ用のバランスボールに変えてみる、デスクワークの間に時間を決めてストレッチなどの時間を挟んでみるなど、少しずつ座ったままの環境を改善するように努めましょう。
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ガンは早期発見で多くの場合根治できる病気になりましたが、日ごろの予防に向けた意識がとても大切。健康を脅かすガン誘発の要素は日常の思いがけないところに潜んでいます。ガンの発症リスクを知って、自分ができることから少しずつ予防に努めるだけでも、将来の健康に大きな差が出るはずです。
今回ご案内した7つのリスクの中から改善できるポイントを見つけたら、ぜひガン予防を意識した健康的な生活習慣にシフトしてください。
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