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睡眠を知ろう!貯まった睡眠不足を解消!
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睡眠を知ろう!貯まった睡眠不足を解消!

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・日本人は総じて睡眠時間が短い傾向にあり、睡眠不足を感じている人も決して少なくない。
・睡眠は体の代謝や記憶の定着に重要。睡眠時間の確保でパフォーマンス向上につながる。
・薬やアルコールに頼らずに眠りの質を上げるためのキーワード「サーカディアンリズム」とは?
・サーカディアンリズムを意識したナチュラル快眠のコツをご紹介。

 

「何だか毎日イライラする」、「日々のパフォーマンスが上がらない」、「ケアレスミスが多い」、「なぜかいつもだるい」。こういった症状、心当たりありませんか?それ、睡眠不足が溜まった状態かもしれません。睡眠不足が数日間でも蓄積すると、身体的にも精神的にも深刻な影響を引き起こすことが近年の研究で明らかになってきています。OECDのデータによれば日本人の平均的な睡眠時間は約7時間50分。その中でも働き盛りの30-50代に至っては男女ともに平日の平均睡眠時間は軒並み7時間を下回っているという調査結果も。

今回は、日本人の睡眠事情に加えて、効果的な睡眠へのアプローチと、睡眠の重要性、薬やアルコールに頼らずに眠りの質を上げる具体的な方法をご紹介します。

日本人の睡眠時間の現状

日本人はそもそも現在どのくらい睡眠をとっているのでしょう?

世界各国の人々の睡眠時間と比較したデータを見ると、日本人は1日に約7時間50分ほど睡眠をとっており、その時間は世界でもトップクラスに短いことがわかります。特に日本人女性の睡眠時間は世界最短と言ってもよいくらい短いのが現状です。

 


OECD Time spent in unpaid and leisureから引用
※国によって統計年が異なるが、日本のデータは2011年のもの。 (http://www.oecd.org/gender/data/balancingpaidworkunpaidworkandleisure.htm visited on Jan 18, 2018)

 

さらに、男女年代別で日本人の1日の平均睡眠時間を見てみましょう。

男性全体では約67%、女性全体では約73%の人が、一日の平均睡眠時間が7時間未満であることがわかります。世界のデータでは1日平均8時間以上の睡眠をとっている国が多いことを考えると、特に働き盛りを中心に日本人の睡眠時間は総じて短いことがわかります。

 


平成26年国民健康・栄養調査報告から引用

 

このように、世界と比べると短い日本人の睡眠時間。もちろん、必要な睡眠時間は人によって異なるとされていますが、最近の研究では、実際の睡眠時間はそれぞれの人に必要と推定される睡眠時間と比べると、平均1時間ほど短い傾向があるとする研究結果もあります[#]Kitamura, S. et al., 2016. Estimating individual optimal sleep duration and potential sleep debt. Scientific reports, 6, p.35812. 。では、より効果的に睡眠をとるにはどうしたらよいのでしょう?それを考えるために、まずは睡眠の基本的なメカニズムを見ていくことにしましょう。

睡眠を知るもの睡眠を制す!

ノンレム睡眠、レム睡眠ってなに?

睡眠は「ノンレム睡眠」、「レム睡眠」の二つのステージに分けることができ、この2つのステージを一晩のあいだに交互に繰り返しています。ノンレム睡眠は、深い眠りについている段階であるのに対して、レム睡眠は筋肉の緊張がなくなり、夢を見ていることもしばしばある段階です。ノンレム睡眠とレム睡眠の特徴は以下のようなものがあります。

 

ノンレム睡眠 レム睡眠

-脳の休息-

①成長ホルモンの分泌(細胞の成長や代謝を促進)
宣言的記憶(知識や言語的に覚えたもの)の整理と定着が行われる
②目玉は動かない
③睡眠全体のおよそ80%
④四段階に分かれている
STAGE1:まどろみ、直ぐ目が覚める
STAGE2:聞こえているが反応できない
STAGE3-4:深く眠った状態で音が聞こえても起きられない
⑤夢を見ないか、単純なイメージの夢をみる
⑥適度な筋緊張が見られる

-身体の休息-

①非宣言的記憶(身体で覚える記憶:運動でのテクニックや、作業など)の整理と定着が行われる
②目玉が左右に動く(Rapid Eye Movement)
③名前を呼ばれるなどの刺激で簡単に目が覚める
④夢を見る
⑤筋肉の緊張がなくなる

 

 

こちらは一度の睡眠でノンレム睡眠とレム睡眠がどのように移り変わるのかを示した図です。(第4版 カールソン神経科学テキスト 脳と行動をもとに作成)

 

睡眠の重要性

睡眠中に分泌される成長ホルモンは代謝にも重要!
ヒトが眠っている間には、様々なホルモンが分泌されます。ノンレム睡眠中には、特に深い睡眠状態である3-4段階において、成長ホルモンが活発に分泌されることが知られています[#]田ヶ谷浩邦, 2008. 睡眠関連ホルモンの計測. 生体医工学, 46(2), pp.169–176. 。成長ホルモンはその名の通り、骨や筋肉の成長を促すため、成長期に重要なのは言うまでもありませんが、実は体内の糖や脂肪、蛋白質の代謝にも大きく関わっている重要なホルモンでもあります[#]Møller, N. & Jørgensen, J.O.L., 2009. Effects of Growth Hormone on Glucose, Lipid, and Protein Metabolism in Human Subjects. Endocrine reviews, 30(2), pp.152–177. 。そのため、肌の新陳代謝にも影響しており、「睡眠不足は美容の大敵」といわれる理由は、睡眠不足(特にノンレム睡眠の3-4段階)によりこの成長ホルモンをはじめとするホルモン分泌や自律神経に乱れが起こり、ダメージを受けたまま修復ができないところにあります。成長ホルモンが多く分泌されるノンレム睡眠の3-4段階は、睡眠の前半に出現します[#]田ヶ谷浩邦, 2008. 睡眠関連ホルモンの計測. 生体医工学, 46(2), pp.169–176.

記憶の整理と定着が行われ、パフォーマンス向上!
さらに、寝ている間には脳の記憶の整理と定着が行われます。これはノンレム、レム睡眠どちらの段階でも行われることが分かっていますが、それぞれの睡眠のステージは異なるタイプの記憶の整理・定着に関与していると考えられています。ノンレム睡眠中には特に人生における過去のエピソードのような、語ることができるような記憶(宣言的記憶)を整理・定着していると考えられています。一方、レム睡眠中にはスポーツの動作や楽器演奏、知人の顔の認識等、経験や練習を必要とする記憶(非宣言的記憶)の整理と定着が行われていると考えられています。

記憶の整理と定着に関しては、興味深い様々な研究が報告されています。
ある研究では、朝に視覚的なタスクに取り組んでもらい、10時間後の夜7時にテストを行うと、間に90分の仮眠を挟んだグループのほうが成績が良く、さらに仮眠をとった場合でも、ノンレム睡眠のみの眠りだった人とノンレム睡眠とレム睡眠の両方が見られた人とでは、両方の睡眠パターンの眠りにつけた人のほうが成績が良いという結果が報告されています[#]Mednick, S., Nakayama, K. & Stickgold, R., 2003. Sleep-dependent learning: a nap is as good as a night. Nature neuroscience, 6(7), pp.697–698. 。レム睡眠をとることができた人は視覚的なタスクをよりうまくこなせたことからも、レム睡眠が経験や練習を必要とする記憶に関わっていることがわかります。

また、別の研究結果では、単語を覚える課題と図形を描く課題を練習してもらい、ノンレム睡眠のみの1時間の仮眠をとってしばらく後にテストをするとどのような成績の変化が出るかを調べています。その結果、ずっと起きていたグループよりも仮眠をとったグループのほうが単語を覚える課題では成績の向上が見られましたが、図形を描く課題の成績はずっと起きていたグループと仮眠をとったグループでは差がないことがわかりました[#]Tucker, M. et al., 2006. A daytime nap containing solely non-REM sleep enhances declarative but not procedural memory. Neurobiology of learning and memory, 86(2), pp.241–247. 。つまり、ノンレム睡眠は言葉の記憶の定着に重要であることがわかります。

睡眠不足になれば、これらの記憶の整理や定着がうまく行われず、仕事であれば同じミスを何回も繰り返したり、作業が覚えられなかったりと日々のパフォーマンスが向上しづらくなります。また、認知能力や反応能力、集中力も低下し、何かに対処しなければいけないのに適切な判断ができない、何が起こっているかとっさに理解できない、という状態にも陥りやすくなるでしょう。仕事や学業、日々の生活にとって睡眠不足が及ぼす影響は決して小さくないのです。
 

 

睡眠のメリットを得るには睡眠時間を確保する以外方法はない?!

先にも述べた通り、ノンレム・レム睡眠のサイクルは一般的にそれぞれ60-90分で1サイクルといわれています。眠りのはじめの3時間はノンレム睡眠が多くあらわれ、後半はレム睡眠が多くあらわれます。個人差はありますが、脳と体の両方をよく休ませるためには最低でも6-7時間以上、できれば8時間程度の睡眠時間を確保するのが良いでしょう。ノンレム・レム睡眠のサイクルでは個人差は大きいので、よくある「1.5時間単位で目覚めるとすっきり!」というのはあくまでも参考程度にしてください。最も重要なことは十分な睡眠時間を確保することで、1.5時間単位だから4時間半眠ればOK!とは考えないように。どうしても、夜間に十分に睡眠がとれない場合は短いお昼寝をすることをおすすめします。
 

サーカディアンリズムを意識しよう!

ヒトは約24時間の周期で体のリズムを刻んでいます。このリズムのことをサーカディアンリズムといいます。サーカディアンリズムは生物時計によって制御されており、主要な生物時計は脳にあるとされていますが、皮膚や内臓など体の至るところに散りばめられており、体温調節やホルモンの分泌などさまざまな体のリズムを整えています。皆さんがよくご存じなのは「腹時計」。「毎日12時にお腹がすく」というのは偶然ではありません。規則的に昼食をとる習慣ができあがると私たちの体はそれに合わせて胃腸を動かし、消化をしようとしたりして準備をし始めますし、そのメカニズムには血糖値を調節する働きのホルモンであるインスリンと生物時計が大きく関わっていると考えられています[#]Sato, M. et al., 2014. The role of the endocrine system in feeding-induced tissue-specific circadian entrainment. Cell reports, 8(2), pp.393–401.

睡眠と覚醒、というリズムはこのサーカディアンリズムの主たるものです。その時計合わせに強力に作用するもの、それは光だといわれています。時計合わせのファクターには他にも食事の時間や、運動なども含まれますが、ヒトはその中でも特に光の影響を大きく受けてこの時計合わせをしているのです。ヒトの昼行性の生物ですからお日様と共におきて日没後眠るというのが基本のリズムとして組み込まれています。脳というのは意外と単純で、明るいと昼、暗いと夜と認識し、体全体の時計を合わせ体温調節やホルモン分泌、睡眠のリズムも調節していくのです。
 

ということは、二十四時間社会といわれる現代日本。夜中でもコンビニエンスストアーは昼間のように明るく、家の中では白色蛍光灯により昼のような明るさですよね。さらにパソコンや携帯から常にブルーライトを浴びている―――。私たちの体内時計は夜でも昼だと認識しやすい状況にあると考えられます。。実際に、約20%の日本人が睡眠で休養が十分に取れていないと感じているという調査結果もあります[#]厚生労働省, 2014. 平成26年 国民健康・栄養調査結果の概要. が、このような環境に身を置いているのですから、不思議なことではないのです。

健康な睡眠習慣を取り戻し、睡眠負債を返済していくためにどうすればよいのか。それは、私たちの体にもともと備えられている体内時計の時間合わせを行い、サーカディアンリズムを意識するというところにカギが隠されています。

快眠への3ステップ!

光を意識しよう
生物時計を動かす一番の要因は「光」です。朝起きたらカーテンを開け、強い朝日を浴びましょう。そうすることで体が朝を認識して時計を定めます。また、日没以降は部屋の照明に気を付けます。本来日没後は、照度を落とすことが望ましく、赤みを帯びた光にすると気持ちが落ち着かせる作用があるといわれています[#]北堂真子, 2005. 良質な睡眠のための環境づくり -就寝前のリラクゼーションと光の活用-. バイオメカニズム学会誌, 29(4). Available at: https://www.jstage.jst.go.jp/article/sobim/29/4/29_4_194/_pdf/-char/ja. 。また、就寝前3時間はテレビ、パソコン、スマホ、蛍光灯など強い光を出す機器からはできるだけ離れましょう。
また、交代勤務等の場合は、一貫したスケジュールで過ごす、職場の照明をより明るくする、寝室をできるだけ暗くする等の工夫で、よりサーカディアンリズムをずらしやすくなります[#]Horowitz, T.S. et al., 2001. Efficacy of bright light and sleep/darkness scheduling in alleviating circadian maladaptation to night work. American journal of physiology. Endocrinology and metabolism, 281(2), pp.E384–91.

食事のリズムを一定に
食事の時間も、先に述べた通り、サーカディアンリズムに関わる一つのファクターとなっています。毎日違う時間にご飯を食べることは避け、食事の時間をできるだけ一定に保ちましょう。寝る直前の食事は安眠の阻害要因とも考えられますし、夕食終了から就寝の感覚が短いと高血圧のリスクになり得るとする研究結果もあります[#]中本真理子 et al., 2013. 勤労者の夕食終了から就寝時間までの間隔と健康状態との関係. 日本栄養・食糧学会誌, 66(4), pp.185–193. 。夕食は就寝の4時間前を目安にするのが良いとされています。

身体を動かそう
運動を行うことも、サーカディアンリズムの調節や睡眠の質の向上に関わっています。ある研究では、明るい光の下で行う運動により、効果的に生物時計の時間を合わせられることが示されています[#]Yamanaka, Y. et al., 2014. Differential regulation of circadian melatonin rhythm and sleep-wake cycle by bright lights and nonphotic time cues in humans. American journal of physiology. Regulatory, integrative and comparative physiology, 307(5), pp.R546–57. 。また、朝方に運動をすると、夕刻に運動するのと比べて睡眠時に副交感神経の活動がより活発になったり、睡眠の質が上がったという研究もあります[#]Fairbrother, K. et al., 2014. Effects of exercise timing on sleep architecture and nocturnal blood pressure in prehypertensives. Vascular health and risk management, 10, pp.691–698. [#]Yamanaka, Y. et al., 2015. Morning and evening physical exercise differentially regulate the autonomic nervous system during nocturnal sleep in humans. American journal of physiology. Regulatory, integrative and comparative physiology, 309(9), pp.R1112–21. 。運動をするなら、朝方がおすすめです。
睡眠導入剤やアルコールに頼らず、快眠を手に入れるためのカギは基本的な生活の中にあります。朝起きて夜ぐっすり寝ることがなかなか難しい現代社会。サーカディアンリズムを整えて、快眠生活を手に入れましょう!

 

 

参考文献

泰羅 雅登,‎ 中村 克樹, ed. 2013. “睡眠と生体リズム.” In 第4版 カールソン神経科学テキスト 脳と行動, 297–332. 丸善出版.