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日本人の生涯有病率が10%。尿管結石症の予防と対策。
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日本人の生涯有病率が10%。尿管結石症の予防と対策。

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・日本人の生涯有病率が10%の尿路結石症とは?
・腎臓結石の形成の危険因子と抑制因子になりえる食品
・プリン体の過剰摂取が主な原因の1つの痛風と併せて知りたい尿酸結石
・ケトジェニックダイエットと腎臓結石の関連性とは?

 

血中や尿中のシュウ酸カルシウムや尿酸値が高い状態は、腎臓に関連した疾患の予備軍であることを意味します。その中でも腎臓にできた結石が尿路に下降して発症する尿路結石症の患者数は年々増加傾向にあると言われ、日本人の生涯有病率が10%、つまり10人に1人がいつか発症する可能性がある比較的有病率の高い病気です[#] 泌尿器科東京慈恵会医科大学. n.d. “尿路結石症【泌尿器科疾患について】 - 東京慈恵会医科大学 泌尿器科.” Accessed June 28, 2021. http://jikei-ur.umin.jp/clinic/disease08.html. 。潜在的に発症している可能性もあるため無症状であっても突然背中や下腹部などに激痛が走り手術が必要になることも。今回は、生活習慣と深い関りがあると言われているこの尿路結石症の予防や対策などについてフォーカスしていきます。

 

尿路結石症とは?

腎臓で形成、蓄積されるシュウ酸カルシウムやリン酸カルシウムなどの結晶が腎臓結石の正体ですが、痛みを感じる前は症状があまりないため、健康診断などで発見されても特に処置を行わない傾向にあります。しかし、腎臓で蓄積されていた結石が繊細な尿管に落ちてくると、腰の後ろ側や、脇腹、下腹などに急な痛みを伴う尿路結石症の症状が発生します。また、結石が尿の流れを妨げるため、腎臓の感染症や腎臓障害を引き起こす可能性があります[#]“Kidney Stones - Symptoms.” n.d. Accessed June 28, 2021. https://www.nhs.uk/conditions/kidney-stones/symptoms/. 。治療法は結石の大きさや場所によりさまざまですが、薬による治療をはじめ、重度の場合は手術が必要な場合も。一度治ったとしても、食事や生活習慣の改善を実践しないと80~90%の確率で再発するとも言われていますので[#]“尿路結石の治療と再発予防|東京女子医科大学病院 泌尿器科.” n.d. Accessed June 28, 2021. 、一度発症した人、小さな結石が見つかった人を含め、結石を成長させない対策を心掛ける必要があります。

 

腎臓結石の形成の危険因子と抑制因子

尿路結石症の発症の予防や症状の改善の鍵は腎臓結石の形成の抑制です。以下のようなポイントが腎臓結石の形成の危険因子及び抑制因子となる可能性があると言われています。

 

シュウ酸カルシウムの摂取を抑えカルシウムを摂取 

腎臓内で一番形成されやすいと言われているのがシュウ酸カルシウム結石。このシュウ酸カルシウム結石は、腸から吸収されたシュウ酸が腎臓でカルシウムと結合し形成されるため、シュウ酸が多く含まれるほうれん草などの葉菜類の野菜、ケールやカリフラワーなどのアブラナ科の野菜、ナッツ類、ブラックペッパー、チョコレート、お茶などの過剰摂取はシュウ酸カルシウム結石の形成の要因となります[#]“3 再発予防 CQ29 シュウ酸はどのような食物に多く含まれるか?また,シュウ酸の摂取について工夫すべきことはあるか?.” n.d. Accessed June 28, 2021. https://minds.jcqhc.or.jp/n/cq/D0003085. 。野菜の場合、熱を通して調理をするとシュウ酸量が減りますので、しっかりボイルすることがおススメです。また、カルシウムの摂取を控えると結石の形成のリスクが抑えられると勘違いされがちですが、これは間違い。結石の形成を妨げるためにカルシウムの摂取を抑えると栄養不足になる恐れがあると同時に、シュウ酸とカルシウムを一緒に摂取することで、シュウ酸とカルシウムが腎臓で吸収・結合される前に胃と腸で両者が結合され排出されるため、カルシウムの摂取は特に控える必要はないのです。とにもかくにも控えるべきはシュウ酸[#]“Calcium Oxalate Stones.” 2021. May 27, 2021. https://www.kidney.org/atoz/content/calcium-oxalate-stone.

また、シュウ酸は、さまざまな健康リスクが伴う可能性のある避けるべき反栄養素の1つ。摂取過多は結石の形成のリスクに限らず、体に様々な悪影響を与える可能性も。シュウ酸が多めの食品を食べる際は、調理法などでシュウ酸を減らす工夫をしてみてくださいね。

【関連記事】「健康によいはずの多くの食材に含まれる「反栄養素」を撃退する方法とは?

 

 

シュウ酸カルシウムの形成を阻害するクエン酸

野菜やレモンやライムなどの柑橘系のフルーツから摂取できるクエン酸は、尿中のカルシウムと結合して結石のリスクを軽減する可能性があると言われています[#]Gul, Z., and M. Monga. 2014. “Medical and Dietary Therapy for Kidney Stone Prevention.” Korean Journal of Urology 55 (12). https://doi.org/10.4111/kju.2014.55.12.775. 。また、形成されたシュウ酸カルシウムの結晶と結合し成長するのを阻害する働きも[#]Gul, Z., and M. Monga. 2014. “Medical and Dietary Therapy for Kidney Stone Prevention.” Korean Journal of Urology 55 (12). https://doi.org/10.4111/kju.2014.55.12.775. 。以前の記事でもお伝えしましたが、クエン酸は天然由来と人工の2種類あります。人工のものは安価で食品添加物としてよく使用されていますが、健康リスクも報告されています。クエン酸を摂取するのであればレモンをちょっと絞って料理に使うなど天然のものを摂取するようにしましょう。

【関連記事】「食品に含まれているクエン酸には健康に良いものと悪いものの2つのタイプがあることを知っていましたか?

 

 

高用量のビタミンCサプリメントの摂取を控える

ある研究によると、ビタミンCに含まれているアスコルビン酸は体内でシュウ酸塩に変換される可能性があることが指摘されているため、長期間にわたる高用量のビタミンCの摂取は結石の形成を促進する可能性が指摘されていますが[#] Massey, L. K., M. Liebman, and S. A. Kynast-Gales. 2005. “Ascorbate Increases Human Oxaluria and Kidney Stone Risk.” The Journal of Nutrition 135 (7). https://doi.org/10.1093/jn/135.7.1673.  [#]Baxmann, A. C., C. De O G Mendonça, and I. P. Heilberg. 2003. “Effect of Vitamin C Supplements on Urinary Oxalate and pH in Calcium Stone-Forming Patients.” Kidney International 63 (3). https://doi.org/10.1046/j.1523-1755.2003.00815.x. 、これはサプリメントなどで高用量のビタミンCの摂取をした場合。レモンなどの食品からの摂取は腎臓結石のリスクと関連していないという研究結果があるため[#]Ferraro, P. M., G. C. Curhan, G. Gambaro, and E. N. Taylor. 2016. “Total, Dietary, and Supplemental Vitamin C Intake and Risk of Incident Kidney Stones.” American Journal of Kidney Diseases: The Official Journal of the National Kidney Foundation 67 (3). https://doi.org/10.1053/j.ajkd.2015.09.005. 、腎臓結石の疑いがある人でビタミンCサプリメントなどを常飲している人は、サプリメントの量を抑えるか天然のレモンからビタミンCを摂取した方が良いかも。上記のクエン酸の恩恵も受けることができます。

 

飲み物にも留意

誰でもできる一般的な予防策が水分。多くの水を摂取することで尿中の結石形成物質の結晶化が軽減されると言われています[#] Han, H., A. M. Segal, J. L. Seifter, and J. T. Dwyer. 2015. “Nutritional Management of Kidney Stones (Nephrolithiasis).” Clinical Nutrition Research 4 (3). https://doi.org/10.7762/cnr.2015.4.3.137. 。しかし、すべての飲み物が当てはまるわけではありません。砂糖や人工甘味料が含まれた炭酸飲料水などは腎臓結石のリスクの増加に繋がるだけでなく[#] Saldana, T. M., O. Basso, R. Darden, and D. P. Sandler. 2007. “Carbonated Beverages and Chronic Kidney Disease.” Epidemiology 18 (4). https://doi.org/10.1097/EDE.0b013e3180646338. 、フルーツジュースなども同様にリスクの増加の可能性が報告されています[#]Johnson, Richard J., Santos E. Perez-Pozo, Julian Lopez Lillo, Felix Grases, Jesse D. Schold, Masanari Kuwabara, Yuka Sato, et al. 2018. “Fructose Increases Risk for Kidney Stones: Potential Role in Metabolic Syndrome and Heat Stress.” BMC Nephrology 19. https://doi.org/10.1186/s12882-018-1105-0. 。これはフルーツジュースに含まれる果糖が原因。よって、果糖の摂取源であるフルーツなどもリスク要因となりえます。以前の記事で果糖を摂取すべきではない理由を説明しているのでご参考に。

 

 

また、コーヒーや紅茶などに含まれるカフェインは、腎臓結石のリスクになり得るという研究結果がある一方で、リスクを軽減する可能性があると結論付けられてる研究結果もあるため[#]Ferraro, Pietro Manuel, Eric N. Taylor, Giovanni Gambaro, and Gary C. Curhan. 2014. “Caffeine Intake and the Risk of Kidney Stones.” The American Journal of Clinical Nutrition 100 (6): 1596. 、適度の量であればあまり気にする必要はなさそう。

特に、診断で小さな腎臓結石が見つかった人や、一度発症している人は以上のような結石が形成される要因や予防策を参考に食事パターンや生活習慣の改善を心掛けてみてください。腎臓結石が発見されていない人はとりわけ意識する必要はなさそうですが、遺伝性による発症率が高いことも報告されているので[#]Curhan, G. C., W. C. Willett, E. B. Rimm, and M. J. Stampfer. 1997. “Family History and Risk of Kidney Stones.” Journal of the American Society of Nephrology: JASN 8 (10). https://doi.org/10.1681/ASN.V8101568. 、家族に発症歴がある人は、完全には安心はできません。意識的に対策をしてみても良いかも。

 

痛風と併せて知りたい尿酸結石

上記のように、シュウ酸カルシウム結石やリン酸カルシウム結石が尿路結石症の主な原因と言われていますが、以前の記事でもお伝えした痛風の発症の原因である尿酸の蓄積が、腎臓結石の一種である尿酸結石の形成を促す恐れがあります[#]“6 Easy Ways to Prevent Kidney Stones.” 2015. December 24, 2015. https://www.kidney.org/atoz/content/kidneystones_prevent. 。これは痛風と同様にプリン体の過剰摂取が主な原因の1つ。痛風の合併症とも言われているので、痛風の発症歴がある人は尿酸結石を予防するためにもプリン体の摂取は控えめに。以前の痛風の記事を参考にしてみてください。

【関連記事】「若い人も痛風に!?プリン体を抑えて健康的な生活を

 


 

 

ケトジェニックダイエットと腎臓結石

geefeeの読者であれば気になるのがケトジェニックダイエットと腎臓結石の関連性。研究では、動物性食品を大量に摂取すると血液と尿が酸性になり尿中のカルシウムの排出が促進される可能性があるため、腎臓結石のリスクが増加することが指摘されています。その大きな要因の1つが高タンパク質の摂取。腎臓結石のリスク回避のために1日80g以上のタンパク質の摂取は推奨されていませんが[#]“[Protein Restriction Guidelines for Kidney Stone Formers].” n.d. Accessed June 28, 2021. http://www.med.umich.edu/1libr/urology/ProteinRestrictionGuidelines.pdf. 、ケトジェニックダイエットのタンパク質の摂取目安量は体重1kgに対して1日に1.2g~2.0gです。60kgの体重の人で、約72g~120gなので80gは範囲内[#]Cde, Franziska Spritzler Rd, and Nicola Guess Rd Mph. 2018. “Guidelines for Protein Intake on a Keto Diet – Diet Doctor.” September 10, 2018. https://www.dietdoctor.com/low-carb/protein. 。よって、ケトジェニックダイエットを実践していて腎臓結石の疑いがある人で、タンパク質を多めに摂取している人は少々摂取量を抑えた方が良いかも。

 

まとめ~尿管結石症の予防と対策。~
10人に1人と比較的有病率が高い尿路結石症。急な激痛なんて経験したくないですよね。主な原因であるシュウ酸の摂取過多によるシュウ酸カルシウム結石。このシュウ酸は腎臓の健康リスク以外でも体に悪影響を与えうる反栄養素です。普段の食事から極力体に取り入れないようにすることで、結石の形成を妨げることができます。特に、シュウ酸が含まれた野菜を多く食べるケトジェニックダイエット実践者や菜食主義者は注意。シュウ酸を減らす食べ方などを参考にしましょう。また、痛風と併せて意識すべきは尿酸結石。プリン体が主な原因となりますので、以前の記事を参考にプリン体が多めの食品を減らすように心掛けましょう。意外な食品に高用量含まれていますよ!
 

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