サプリメントとして最近世界中で人気の高いスピルリナ。古代アステカ人も食べていたというスピルリナは、NASA(米国航空宇宙局)が宇宙での栽培研究に採用したこともあり[#]https://ntrs.nasa.gov/archive/nasa/casi.ntrs.nasa.gov/19890016190.pdf Tadros, M. G. (1988). Characterization of Spirulina biomass for CELSS diet potential. 、最近の研究では、地球上に存在する「最も完全な栄養食」だと言われています。このスピルリナの驚くべきパワーの秘密を探ってみましょう。
スピルリナとは?
スピルリナとは、シアノバクテリア(ラン藻類)と呼ばれる微生物で、藍藻と呼ばれる原核生物の一種。藻類は一般に淡水で生息するのに対し、スピルリナは淡水・海水の両方で生息します。一般の植物のように、光を分解して光合成を行います。
スピルリナの驚くべきパワーの秘密
1.スピルリナは栄養成分の塊
現在、一般的にスピルリナは、乾燥させた粉末の状態でサプリメントとして服用されています。この粉末スピルリナ7g中の栄養成分は以下のようになります[#]Food Composition Databases Show Foods List. n.d. Accessed December 10, 2018. https://ndb.nal.usda.gov/ndb/search. 。
- タンパク質:4g
- ビタミンB1(チアミン):0.167mg (推奨量の11%)
- ビタミンB2(リボフラビン):0.257mg (推奨量の15%)
- ビタミンB3(ナイアシン):0.897mg (推奨量の4%)
- 亜鉛:0.14mg (推奨量の21%)
- 鉄分:2.0mg (推奨量の11%)
- 脂肪酸(オメガ-6およびオメガ-3脂肪酸を含む):約0.54g
その他にも、スピルリナには、マグネシウム、カリウム、マンガンなど身体に必要な多くの栄養成分を含んでいます。また、スピルリナに含まれるタンパク質には、すべての必須アミノ酸が含まれており、見方によっては卵よりも良質であるとのことです[#]Babadzhanov AS, Abdusamatova N, Yusupova FM, Faizullaeva N, Mezhlumyan LG, Malikova MK. Chemical composition of Spirulina platensis cultivated in Uzbekistan. Chemistry of Natural Compounds. 2004; 40(3): 276-279. 。
2.強力な抗酸化作用および抗炎症作用
スピルリナの独特の青緑色の色素はフィコシアニンという成分で、スピルリナに豊富に含まれています。このフィコシアニンは、高い抗酸化作用および抗炎症作用があり、がんなどさまざまな病気を予防するのに効果があると考えられています[#]Shih CM, Cheng SN, Wong CS, Kuo YL, Chou TC. Antiinflammatory and antihyperalgesic activity of C-phycocyanin. Anesthesia & Analgesia. 2009; 108(4): 1303-1310. [#]Farooq SM, Boppana NB, Asokan D, Sekaran SD, Shankar EM, Li C, Ebrahim AS. C-phycocyanin confers protection against oxalate-mediated oxidative stress and mitochondrial dysfunctions in MDCK cells. PloS one. 2014; 9(4): e93056. [#]Romay CH, Gonzalez R, Ledon N, Remirez D, Rimbau V. C-phycocyanin: a biliprotein with antioxidant, anti-inflammatory and neuroprotective effects. Current protein and peptide science. 2003; 4(3): 207-216. 。
3.悪玉コレステロールと中性脂肪を減らす
最近の研究によると、スピルリナは、悪玉コレステロールと中性脂肪を減らし、善玉コレステロールを増やすと報告されています。具体的には、
- 二型糖尿病患者25人のうち15名が、毎日2gのスピルリナを服用したところ、糖尿病マーカーが改善した[#]Parikh P, Mani U, Iyer U. Role of Spirulina in the control of glycemia and lipidemia in type 2 diabetes mellitus. Journal of Medicinal Food. 2001; 4(4): 193-199. 。
- 高コレステロール値の患者が、毎日1gのスピルリナを3カ月間服用したところ、中性脂肪が16.3%、悪玉コレステロールが10.1%下がった[#]Mazokopakis EE, Starakis IK, Papadomanolaki MG, Mavroeidi NG, Ganotakis ES. The hypolipidaemic effects of Spirulina (Arthrospira platensis) supplementation in a Cretan population: a prospective study. Journal of the Science of Food and Agriculture. 2014; 94(3): 432-437. 。
- 他のいくつかの研究結果によると、毎日4.5gから8gの服用が脂質の低下や免疫調節、抗酸化作用に効果的であることが分かった[#]Mazokopakis EE, Starakis IK, Papadomanolaki MG, Mavroeidi NG, Ganotakis ES. The hypolipidaemic effects of Spirulina (Arthrospira platensis) supplementation in a Cretan population: a prospective study. Journal of the Science of Food and Agriculture. 2014; 94(3): 432-437. [#]Park HJ, Lee YJ, Ryu HK, Kim MH, Chung HW, Kim WY. A randomized double-blind, placebo-controlled study to establish the effects of spirulina in elderly Koreans. Annals of Nutrition and Metabolism. 2008; 52(4): 322-328. 。
4.悪玉コレステロールを下げる
悪玉コレステロールによる脂質の酸化は、心臓病などさまざまな病気の原因[#]Mylonas C, Kouretas D. Lipid peroxidation and tissue damage. In Vivo (Athens, Greece). 1999; 13(3): 295-309. [#]Thanan R, Oikawa S, Hiraku Y, Ohnishi S, Ma N, Pinlaor S, Murata M. Oxidative stress and its significant roles in neurodegenerative diseases and cancer. International journal of molecular sciences. 2014; 16(1): 193-217. [#]Ishigaki Y, Oka Y, Katagiri H. Circulating oxidized LDL: a biomarker and a pathogenic factor. Current opinion in lipidology. 2009; 20(5): 363-369. 。スピルリナの抗酸化作用は、脂質の酸化を改善させる効果があることが分かってきました[#]Ismail M, Hossain MF, Tanu AR, Shekhar HU. Effect of spirulina intervention on oxidative stress, antioxidant status, and lipid profile in chronic obstructive pulmonary disease patients. BioMed research international. 2015. [#]Ku CS, Yang Y, Park Y, Lee J. Health benefits of blue-green algae: prevention of cardiovascular disease and nonalcoholic fatty liver disease. Journal of Medicinal Food. 2013; 16(2): 103-111. 。
5.口腔がんを抑制する可能性
スピルリナには、がんを抑制する可能性が報告されています。特に口腔がんに効果があるのではないかとの研究結果が発表されています。
- 口腔粘膜下繊維症(OSMF口腔内の前がん状態)の患者が 1年間毎日1gのスピルリナを服用したところ、45%の患者の患部が治癒した(服用していない患者は7%が治癒)。また、その後服用をやめた患者の大多数が、次の年には45%が再発した[#]Mathew B, Sankaranarayanan R, Nair PP, Varghese C, Somanathan T, Amma BP, Nair MK. Evaluation of chemoprevention of oral cancer with Spirulina fusiformis. Nutrition and Cancer. 1995; 24(2): 197-202. 。
- 口腔粘膜下繊維症の患者40人のうち20名が、1年間毎日服用したところ、炎症促進物質やプロスタグランジンの産生を抑え、急性外傷後の細胞の状態や恒常性を維持するペントキシフィリンを服用した患者よりも、患部の症状が改善された[#]Mulk BS, Deshpande P, Velpula N, Chappidi V, Chintamaneni RL, Goyal S. Spirulina and Pentoxyfilline–A Novel Approach for Treatment of Oral Submucous Fibrosis. Journal of clinical and diagnostic research. 2013; 7(12): 3048-3050. 。
6.血圧を下げる可能性
スピルリナの服用によって、心臓発作や腎臓病の原因である高血圧を改善するのではないかという報告があります。
- 毎日4.5gのスピルリナを服用したところ、高血圧が個々の正常値まで改善された(1gのスピルリナでは効果がなかった)[#]Mazokopakis EE, Starakis IK, Papadomanolaki MG, Mavroeidi NG, Ganotakis ES. The hypolipidaemic effects of Spirulina (Arthrospira platensis) supplementation in a Cretan population: a prospective study. Journal of the Science of Food and Agriculture. 2014; 94(3): 432-437. 。
- スピルリナによる高血圧の改善は、一酸化窒素の生成が増加したことによると考えられる。一酸化窒素は、血管を安定させ、拡張する働きがある[#]Juárez-Oropeza MA, Mascher D, Torres-Duran PV, Farías JM, Paredes-Carbajal MC. Effects of dietary Spirulina on vascular reactivity. Journal of medicinal food. 2009; 12(1): 15-20. 。
7.アレルギー性鼻炎の症状を改善
スピルリナのサプリメントは、アレルギー性鼻炎に効果があり、症状を改善してくれることが分かっています[#]Sayin I, Cingi C, Oghan F, Baykal B, Ulusoy S. Complementary therapies in allergic rhinitis. ISRN allergy. 2013. 。
- アレルギー性鼻炎の患者129人のうち85名が、毎日2gのスピルリナを服用し、44名がプラセボの錠剤を服用したところ、スピルリナ服用群の鼻汁、くしゃみ、鼻づまり、かゆみなど症状が改善された[#]Cingi C, Conk-Dalay M, Cakli H, Bal C. The effects of spirulina on allergic rhinitis. European Archives of Oto-Rhino-Laryngology. 2008; 265(10): 1219-1223. 。
8.貧血症に効果がある可能性
スピルリナは年配者の貧血症に効果があると報告されています。貧血には数多くの種類があり、最も一般的なのが血液中のヘモグロビンや赤血球の減少により、引き起こされるものです。
- 貧血症の既往歴のある年配者40人を対象に500mgのスピルリナ錠剤を毎日6 錠12週間にわたって服用した研究によると、スピルリナのサプリメントが赤血球のヘモグロビンを増やしたと報告されている[#]Selmi C, Leung PS, Fischer L, German B, Yang CY, Kenny TP, Gershwin ME. The effects of Spirulina on anemia and immune function in senior citizens. Cellular & molecular immunology. 2011; 8(3): 248-254. 。
9.筋力と筋持久力に効果がある可能性
スピルリナサプリメントの摂取が、ランニングの際の筋肉の疲労を遅らせ、持久力の改善をもたらしているという報告があります[#]Kalafati M, Jamurtas AZ, Nikolaidis MG, Paschalis V, Theodorou AA, Sakellariou GK, Kouretas D. Ergogenic and antioxidant effects of spirulina supplementation in humans. MEDICINE & SCIENCE IN SPORTS & EXERCISE. 2010; 42(1): 142-151. [#]Lu HK, Hsieh CC, Hsu JJ, Yang YK, Chou HN. Preventive effects of Spirulina platensis on skeletal muscle damage under exercise-induced oxidative stress. European journal of applied physiology. 2006; 98(2): 220-226. 。
10.血糖値を下げる可能性
スピルリナは、二型糖尿病の患者の血糖値を劇的に改善するという報告があります。ただし、以下の研究報告は、サンプル数が少なく、短期間の実験結果でもあり、さらなる研究が望まれます。
- 二型糖尿病の患者25人のうち15名が、毎日2gのスピルリナを2カ月間服用したところ、2カ月後に有意に血糖値が下がったと報告されている。これは食後2時間での調査でも同じ結果となっている[#]Parikh P, Mani U, Iyer U. Role of Spirulina in the control of glycemia and lipidemia in type 2 diabetes mellitus. Journal of Medicinal Food. 2001; 4(4): 193-199. 。
スピルリナの摂取の仕方
長期において宇宙で働く宇宙飛行士のサプリとしても知名度が上がったスピルリナのサプリメントは、カプセル、錠剤、粉末などの形態があります。スピルリナはサプリであっても食品みたいなものなので、摂取のタイミングについてあまり神経質になる必要はありませんが、ワークアウト前などに摂取すると含まれているプロテインをうまく利用することができます。たっぷりのお水とともに摂取しましょう。
また、重大な副作用のない安全な食物サプリメントのスピルリナは[#]Karkos, P. D., S. C. Leong, C. D. Karkos, N. Sivaji, and D. A. Assimakopoulos. 2011. “Spirulina in Clinical Practice: Evidence-Based Human Applications.” Evidence-Based Complementary and Alternative Medicine: eCAM 2011. https://doi.org/10.1093/ecam/nen058. 、1日8gの投与で効果が発揮できるといった研究報告や[#]Park HJ, Et al. n.d. “A Randomized Double-Blind, Placebo-Controlled Study to Establish the Effects of Spirulina in Elderly Koreans. - PubMed - NCBI.” Accessed December 10, 2018. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18714150. 、1日1g程度が適量といった薬剤師によるデーターベースがありますが、個人個人で適切な量に差が出てくると思われます。少ない量から始めて、調子をみながら量を調節いってみてください。
スピルリナを摂取する際の注意点
- 水銀などの重金属
ある研究では多くのスピルリナに含まれる水銀などの重金属の含有量は、人間が摂取できる1日の許容範囲だという結果が出ていますが[#]Al-Dhabi, Naif Abdullah. 2013. “Heavy Metal Analysis in Commercial Spirulina Products for Human Consumption.” Saudi Journal of Biological Sciences 20 (4): 383. 、水質などによって含有量に差異が出る可能性もあるので、サプリの品質や産地もしっかりと確認して選ぶと良いでしょう[#]Al-Dhabi, Naif Abdullah. 2013. “Heavy Metal Analysis in Commercial Spirulina Products for Human Consumption.” Saudi Journal of Biological Sciences 20 (4): 383. 。
- 肝毒性の強いミクロシスチン
特に、ミクロシスチンを含んでいる粗悪サプリは要注意。肝毒性が強く、アオコの原因となる毒素であるミクロシスチンを継続して摂取すると発がんリスクが高まります。子供の場合は最悪の場合、ショック死の可能性もあるとのこと。信頼できるサプリを見つけることが大事です[#]Al-Dhabi, Naif Abdullah. 2013. “Heavy Metal Analysis in Commercial Spirulina Products for Human Consumption.” Saudi Journal of Biological Sciences 20 (4): 383. ので、サプリの中でも値段の安さだけで評価すべきでない部類の代表格になります。
- 免疫系疾患
免疫系を刺激する作用があるスピルリナは、免疫系疾患、リウマチ性関節症、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症などの[#]Al-Dhabi, Naif Abdullah. 2013. “Heavy Metal Analysis in Commercial Spirulina Products for Human Consumption.” Saudi Journal of Biological Sciences 20 (4): 383. 免疫系疾患を持つ方には注意を要するため、医師の指示を仰いでください。
- アレルギー
スピルリナにアレルギーのある人が報告されていますので、注意しましょう。
スピルリナは人類にとってさまざまな可能性をもたらしてくれる食べ物です。今後の研究が進むと、さらに隠されたパワーが明らかになっていきそうですよね。ご自身の目的や体質に合わせて、サプリメントで効果的に取り入れてみてはいかがでしょう。
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