飽和脂肪酸が健康に良くないという従来の見方に対する反論。
日本やアメリカを含めほとんどの国の公的機関では、飽和脂肪酸の摂取を極力抑えるように昔から推奨しています。その理由の1つが、飽和脂肪酸の過剰摂取によってLDL(悪玉コレステロール)の上昇し、これにより心筋梗塞などの心臓疾患のリスクが増大する、というもの。確かに、LDLは、冠状動脈性心臓病のリスクと関連していますが、飽和脂肪酸が増加させるのは粒子が大きく比重が軽いlarge buoyant LDLで、逆に、粒子が細かく比重が重く体内での吸収性が高い超悪玉コレステロールと呼ばれているsmall dense LDLを減少させる働きがあることが分かっています。血中コレステロールの上昇が心臓の健康に悪影響を与えるというそもそもの通説がもう昔の話であり、インターネット等で検索した際に出てくる情報は多くが古い内容。飽和脂肪酸=心臓病ということ自体が最近ではナンセンスな見解と考えられているのです。
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また、肉などの脂肪から摂取した飽和脂肪酸が体重の増加を引き起こすとも言われてきました。いつの日からか肉は太る、というのが合言葉のようになっていますが、肉自体が体重増加を助長するわけではなく、問題となるのは糖質。糖質の摂取過多な食生活を送ると、体は糖質をエネルギーとして使いきれず、そういう状態で摂取した脂質は消費・燃焼されずに体内で蓄積されます。ケトジェニックダイエットのような低糖質高脂質の食事パターンであれば、糖質がエネルギーとして豊富に存在しないため、脂肪がエネルギーに変換され脂肪燃焼されます。実際の研究でも、高炭水化物の食事下での飽和脂肪酸の摂取は、代謝に悪影響を与える可能性が示唆されているので、飽和脂肪酸の摂取が問題というよりは、むしろ炭水化物の方に問題があると考えられています[#]Volk, Brittanie M., Laura J. Kunces, Daniel J. Freidenreich, Brian R. Kupchak, Catherine Saenz, Juan C. Artistizabal, Maria Luz Fernandez, et al. 2014. “Effects of Step-Wise Increases in Dietary Carbohydrate on Circulating Saturated Fatty Acids and Palmitoleic Acid in Adults with Metabolic Syndrome.” PloS One 9 (11). https://doi.org/10.1371/journal.pone.0113605. 。
飽和脂肪酸を避けるために肉の消費を減らし、炭水化物などでカロリーを補う、あるいは、脂質と炭水化物が両方とも多い食事パターンが体重増加につながります。
また、飽和脂肪酸のココナッツオイルから抽出された中鎖脂肪酸(MCTオイル)の主成分であるカプリル酸とカプリン酸は、代謝を上げて脂肪を燃やし体重を減らす効果も期待できます[#] puddleg. 2017. “What Really Happens to Saturated Fat on a Low Carb Diet?” March 9, 2017. https://profgrant.com/2017/03/10/what-really-happens-to-saturated-fat-on.... 。飽和脂肪酸だけにフォーカスして体重増加を懸念するのは早計であると言えるでしょう。
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