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『HEAD STRONG シリコンバレー式頭がよくなる全技術 』デイヴ・アスプリー著
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『HEAD STRONG シリコンバレー式頭がよくなる全技術 』デイヴ・アスプリー著

 

二ューヨーク・タイムズでもベストセラー入りした2014年出版(米国)の『Bulletproof Dietシリコンバレー式自分を変える最強の食事』では、ブレットプルーフ・コーヒー(完全無欠コーヒー)をはじめ画期的な食事法で自身が50キロ減量に成功した方法を焦点に執筆したデイヴ・アスプリー氏。自称プロ・バイオハッカーとして17年間100万ドル以上を自己投資し、サプリ、食事法、生活習慣、環境、運動法、道具を駆使して180歳まで生きる目標を掲げています。

2017年出版(米国)の本書では、同様のバイオハックでいかに誰もが生まれ持った脳のパフォーマンスを最大限に引き伸ばせるかを紐解いています。和訳版『HEAD STRONG シリコンバレー式頭がよくなる全技術 』も2018年4月に出版され、すでに話題となり注目されています。生命にとってのエネルギーの源ミトコンドリアをアップグレードし、脳を細胞レベルから活性化するために即実行できる方法から経済的・時間的投資を要する方法まで、幅広く検証した興味深い内容が紹介されています。

アスプリー氏は、自らシリコンバレーIT業界の第一線で活躍しつつMBA取得に向けて勉強に励んでいた頃、表面上の成功とは裏腹に内面では感情コントロールや集中力の欠如をひしひしと感じ、悩んでいました。そこで自分の脳をコンピューター同様、科学的にハックして性能を高められないかと考え、自身の脳スキャンから研究を開始し、ありとあらゆる方法を試した結果、脳が本来の性能を発揮するようになったとのこと。この本では、その中で最も効果のあった方法を2週間で試せるプログラムも紹介しています。

 

<Part 1 脳を「ハック」して最強にする>

かつて脳の性能は生まれた時から決まっていて、老いと共に退化するのみと信じられていました。しかし、20世紀後半に脳の神経には可塑性(機能的・構造的に変化する性質)があることがわかりました。脳に「異常がない」だけで満足していては勿体無い。性能をアップグレードし、100%力を発揮させれば、無意識的に行う決断、判断、欲望までもがポジティブに変わります。脳は人生のオペレーティングシステム。全ては脳次第なのです。

 

有利なスタート

物忘れ、無性に何かを食べたくなる、疲労、激しい感情の起伏、集中力の欠如は脳エネルギーが弱まった症状。脳を活性化するために簡単に変えられるものがたくさんあります。食べ物、生活用品、電気製品の点滅灯、電子機器の音・電源・アラート、寝室窓の遮光などなど。これらについてはこの後詳細に語られますが、まず理解してほしいのが、人間の意思の力は有限であり、一日の過程で消費されていくもの。これに上記の環境の要因も影響を及ぼします。

意思が折れたとしても自分の人格のせいであるとは限りません。意思の力というリソースを大切にするために、スマホの電源やメール着信音などを消すことで環境の中の刺激を低減させることなどを推奨。また、一日の度重なるいろいろな決断による心の疲労が積もる前に、大事な決断は朝一番に下すことを勧めています。

 

強力なミトコンドリア

体内のミトコンドリアは生命のエネルギーの源で、ミトコンドリアの密度が一番高いのは、脳、心臓、目の網膜。そのため、ミトコンドリアの機能低下はまずこの三部位に表れます。

ホルモン、血糖値、食習慣、ライフスタイルなどがミトコンドリアの機能を左右します。ミトコンドリアの機能の効率は、70歳の人だと30歳の人と比べて平均約50%減少すると考えられています。

 

脳細胞を増やす

ニューロン(神経細胞)は機能するために膨大なエネルギーを必要とし、エネルギーが不足すると死んでしまいます。そして、ニューロン間の連絡管の絶縁体の働きをする「ミエリン」は脂肪でできています。

また、人間の脳には歳をとっても新たなニューロンが生まれ続ける「神経発生」(neurogenesis)の現象があることも今ではわかっています(ただし、環境が整っていない場合、その多くはすぐに死滅するとも)。ですから、良質の脂質、特にグラスフェッドバターやグラスフェッド肉からヘルシーな飽和脂肪酸を摂取し、神経新生率を低下させる糖分と慢性的ストレスを制限すれば、歳をとっても新しいニューロンを産生し、せっかくできた新しいニューロンを大事に育成することができるのです。

適度な運動や、「楽しい」と思えるような環境、またセックスも神経新生率向上に効果的です。ただし男性は毎日射精すると男性ホルモンと大切なミトコンドリアが無駄になるので注意が必要とのこと。

 

脳と体の最凶の敵「炎症」

慢性炎症を患うと、体内で発生するサイトカインという物質によって脳が影響を受け、思考能力が低下します。

炎症の原因は様々な物理的・心理的ストレス。睡眠不足、環境の中の様々な汚染物質、有害な光(蛍光灯など)の影響、食事の内容、腸内環境など。脳が炎症の影響を受けると、怒りやすくなったり、欲望を我慢する自制心が低下したり、記憶力が低下したりします。

血液検査[CRP(C反応性蛋白)、ホモシステイン、Lp-PLA2(リポ蛋白関連ホスホリパーゼA2)など]で炎症の度合を測れるので、専門医に相談することも推奨しています。
 

 

<Part 2 異次元レベルの「エネルギー」を得る>

精神力や集中力を高める鍵は身近なところに転がっています。このPart2では、どうすれば細胞エネルギー生成効率を劇的に高め、新しく健康なミトコンドリアとニューロンを生成し、炎症を抑えられるかを説明します。

 

「脳の燃料」をコントロールする

ポリフェノールは活性酸素から体を守る抗酸化物質で、腸内環境を整え、脳由来神経栄養因子(BDNF)という物質のレベルを向上させることで神経新生率を高め、不要あるいは痛んだ細胞のアポトーシス(細胞の自然死)を促し、血中のサイトカインを減らすことで炎症を抑える働きをします。このような素晴らしい効用のあるポリフェノールは消化の過程で吸収されにくい性質を持つのですが、脂質と一緒に摂取することで格段に吸収されやすくなります

脂質を摂るためのお勧めの食材としてはグラスフェッド肉、グラスフェッドバター、良質の鶏卵、オリーブ油、天然の水銀汚染の少ない魚(イワシ、鮭、サンマ、サバ、マスなど)、クリルオイルなど。また、ケトン体が脳細胞のミトコンドリアのエネルギー源としてとても効率的であり、そのためにMCTオイルが有効であることを説きます。また、MCTオイルやバターの脂質をミキサーでコーヒーに混ぜ込んだいわゆる「完全無欠コーヒー」が、コーヒーのポリフェノールと良質の脂質を含むため効果的であるとも。
 

脳をダメにする食べ物

トランス脂肪は炎症の原因になります。また、個人差はあるものの、乳製品(ただし、バター(さらによいのがギー)は乳タンパク質がとても少ないため余程敏感な人以外は大丈夫)、グルテン、オメガ6の多い植物油も炎症の原因になります。また、カビ毒はミトコンドリアに対し高い毒性があるので、含まれていそうな食材には気を付けましょう。

良性脂質も高温調理すると毒性脂質に変化するので揚げ物は避けてください。アスパルテーム(人口甘味料の一種)は少量でもミトコンドリアに対し毒性があります。糖質、特に果汁や高果糖コーンシロップに含まれる果糖、アルコールもニューロンに対し悪影響があると考えられています。また、野菜や果物はできる限り有機栽培を選びましょう、とのこと。

 

鉄壁の「解毒システム」をつくる

人口の約28%はカビに対するアレルギーなどの遺伝的過敏症があると考えられています。その他の人でも、カビ毒により炎症が起こり、ミトコンドリアの機能が低下します。カビ毒以外にも、有害重金属や多くの医薬品にはミトコンドリアを直撃する毒性があります。

これらの毒は体内で脂肪内に蓄積される傾向があるので、体脂肪が減ればデトックスの助けになります。自宅や職場に雨・水漏れがないか点検し、カビがありそうならば直ちに対処してください。また、場所によって体調が変わらないか観察し、カビが繁殖していないかを検証しましょう。

 

脳を「光」「空気」「寒さ」にさらす

LED、蛍光灯、液晶などの画面は、健康のためにとても有益な自然光と違い、青など特定の周波数の光に偏る光であり、また高速に点滅していることなどから、体にストレスとなり、ミトコンドリアの機能にも悪影響を及ぼします。赤いLED電気やサングラスで遮断してください。こうした光に特に過敏になるアーレン症候群は約50%の人が患っていると考えられていますので、検査を受けてみてください。

また、身体を短い時間冷やすことで自律神経を整え、ミトコンドリアの機能を刺激できると考えられています。シャワーの最後の30秒を冷水に切り替えるのも効果的です。

 

「激しい睡眠」「すばやい瞑想」「一瞬の運動」のメソッド

質の良い睡眠や瞑想はニューロン間の連絡網の形成を促進して脳の構造を改善し、新しい記憶を脳に深く刻むのに役立ちます。睡眠は単に時間の長さを追うのではなく、質を優先させてください。瞑想は脳の筋トレ。運動は週に一回だけのHIIT(High Intensity Interval Training)を推奨。ハードな運動のあとは少なくとも数日体を休めましょう。

 

<Part 3 最速ですべてを「実行」する>

ここまで読めば、脳をよくするのもダメにするのも自分次第であることがわかってきました。脳の回転を遅くする要因を除き、エネルギーを高めることで最高の自分になる。このPart 3では脳内ミトコンドリアを活性化する食事法と生活習慣改善法を2週間かけて実行するプログラムが紹介されています。

 

「脳の燃料」としての食事

この章で紹介されているレシピを2週間使って体をケトン生成状態(ケトーシス)に変えることを推奨。今まで糖分の多い食生活をしてきた人、低脂肪ダイエットをしてきた人は一時的にスランプに陥る可能性があります。出来る限りグラスフェッド肉と有機栽培食材を使ってください、とも。(geefeeユーザーの皆様は、日本で手に入りやすい食材を使用したgeefeeレシピをご参考にどうそ!)

 

「ライフスタイル」のすべてを完全無欠にする

環境照明・画面・寝室の遮光などで光環境を整えましょう。朝はミトコンドリアを活性化する冷水シャワー、瞑想、日光浴で一日をスタート。午後も適度な自然光を浴び、2時以降はカフェインを控えましょう。就寝2時間前には照明を落とし、生はちみつを最大で大さじ1杯摂取、ボックス呼吸法を使い、Wi-Fiを消し、携帯電話は機内モードに変換、11時までに就寝しましょう。週一回はHIIT運動やウェイトトレーニングをしましょう(ただし、就寝2時間前まで)。

 

脳を強化するサプリ

サプリを使わなくてもミトコンドリアは強化できますが、使わないとMAXレベルに達成しないこともあります。サプリによってコスト、効果、ミトコンドリア活性化までかかる時間が様々です。プログラム実行の2週間のあいだ、ここで紹介するサプリの中から自分に合うものを見つけると良いでしょう。

なお、この章は和訳版では省かれています。興味のある方は英語の原書をどうぞ。ちなみに、推奨されているサプリは次の通り: カフェイン、COQ10、BCAA、ビタミンB12、葉酸、マグネシウム、ビタミンD3、活性炭、クレアチニン、クリルオイル、ポリフェノール、スルフォラファン、グルタチオン、活性PQQなど。容量や個人的相性など、使う場合は専門家の助言のもとで。

 

限界の先

このPart 3で紹介したプログラムを2週間実践して効果を実感したら、そのまま無期限に続行してください。さらに上のレベルを目指したければ、プログラムを続行しつつ、この章で紹介されているいくつかの上級者用の方法を追加導入し、限界を超えるパフォーマンス達成を目指してください、と。

 

本の内容は途中かなり専門的になり、読み続けるのが辛くなる部分もあるかもしれません。細かい説明は斜め読みして、気になる箇所をじっくり読み返してもいいでしょう。最近、世界の健康業界で注目されているミトコンドリアについての知識、さらには頭脳の活性化や健康一般についてご興味のある方にとっては外せない一冊です! 

 

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