選び方が下手だとかえって体に悪い？健康効果が期待できるお酢の選び方。

砂糖や塩、醤油などに続いて使用率の高い調味料の１つで、ほとんどの家庭に一本は常備されているのがお酢。オンラインショップやスーパーなどではさまざまな種類のお酢を見かけますが、一体どんなお酢を選べば良いか分からず、ついつい安価な物を購入してしまう人もいるのではないでしょうか？また、健康効果のみがフォーカスされがちですが、種類によっては意外と健康リスクもあるということをご存じでしたか？今回は、このお酢の健康へのインパクトと選び方にフォーカスしていきます。

意外と少ない、お酢に期待できる健康効果。

米酢、黒酢、アップルサイダービネガー、バルサミコ酢などさまざまな種類のお酢が販売されていますが、簡単に言うと、糖質を含む原料をアルコール発酵させた後に酢酸発酵させたものがお酢です。米を原料にしたものが米酢、リンゴを原料にしたものがアップルサイダービネガー。その原料によって健康へのインパクトも多少異なるわけですが、基本的にはお酢の健康効果はお酢に含まれる酢酸によるもの。とはいえ、その健康効果はせいぜい

・インスリン抵抗性のある人の食後のインスリン感受性を改善する
・肥満な人の体重、肥満度指数、内臓脂肪、胴囲、血清トリグリセリドレベルの低下

と、あくまでも「インスリン抵抗性のある人」や「肥満な人」といった健康に何かしらの問題がある人にとって有意に働くと言われています。特別なお酢を除いては(後で説明します)私たちが摂取している一般的なお酢が健康へ大きな好影響を与えるわけではない一方で、お酢の健康効果を過信して摂取し過ぎると、それなりに健康へのリスクも伴います。

お酢が健康に悪いとされる側面とは？

発酵食品であるお酢の最も懸念すべき点はヒスタミン。以前の記事で発酵食品には高いレベルのヒスタミンが含まれている傾向にあるということをお伝えしましたが、お酢も同様にヒスタミンが多く含まれている食品の１つ。アレルギーに似た症状を引き起こす可能性が指摘されています^{[#]“[Serum Diamine Oxidase in Pseudoallergy in the Pediatric Population].” n.d. Accessed December 2, 2021. https://www.deficitdao.org/wp-content/uploads/2018/12/029-Serum-DAO-Pseu....} 。このヒスタミン含有量はお酢の種類によっても異なります^{[#] “Rich Histamine Foods.” 2018. November 28, 2018. https://www.deficitdao.org/en/dao-deficiency/histamine/food-which-interf....  [#]Schirone, M., P. Visciano, R. Tofalo, and G. Suzzi. 2017. “Histamine Food Poisoning.” https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27752845.} 。

一般的なお酢 約 500mg/1kg
アップルサイダービネガー 約20mg/1kg
バルサミコ酢 約4000mg/1kg

ヨーグルト 約13mg/1kg
牛乳 約 400mg/1kg
サワークラフト 約 10mg-200 mg/1kg
醤油 約 592mg/1kg

他の食品と比較してもお酢には比較的多くのヒスタミンが含まれ、バルサミコ酢に限ってはダントツで含有量が多いことが示されています。逆に極端にヒスタミン量が低いのがアップルサイダービネガー。ヒスタミン含有量が両極端なバルサミコ酢とアップルサイダービネガーを詳しく見ていきます。

鉛の含有量が多めのバルサミコ酢

ブドウが原材料のバルサミコ酢。結構高価でグルメなお酢として知られていますよね。カリフォルニアで実施されたテストによると、選出された58種類のバルサミコ酢のうち約70%からカリフォルニア州の基準値を超える高レベルの鉛が検出されたということが報告されています^{[#]Busch, Sandi. 2011. “Health Risks of Balsamic Vinegar.” September 2, 2011. https://www.livestrong.com/article/533328-health-risks-of-balsamic-vinegar/.} 。これは、一般的なお酢の3倍もの量^{[#]none. 2014. “Keep the Lead Out, Avoid Balsamic, Red Wine Vinegars.” July 20, 2014. https://www.thegardenisland.com/2014/07/20/opinion/keep-the-lead-out-avo....} 。この含有量だと大人で1日にコップ一杯ほどの量、子供で大さじ一杯～二杯程度を消費しない限り、人への有害性は低いとされていますが、鉛自体、野菜やフルーツジュースなどさまざまな食品にも含まれているので極力摂取を控えるようにするのが得策^{[#]“Lead in Food: A Hidden Health Threat.” n.d. Accessed December 2, 2021. https://www.edf.org/health/lead-food-hidden-health-threat.} 。特に、鉛は子供の脳の発達に悪影響を及ぼす可能性があるので、敢えて高価なバルサミコ酢を選ぶメリットはあまりないと言えるでしょう。

お酢の中では一番健康的と言われているアップルサイダービネガー

アップルサイダービネガーが健康的なお酢であるということはさまざまなメディアで伝えられていますが、その理由の１つがプロバイオティクスとして機能する「マザー」と呼ばれる酵母に起因しています^{[#]McDonald, Edwin, IV. 2018. “Debunking the Health Benefits of Apple Cider Vinegar.” UChicago Medicine. August 23, 2018. https://www.uchicagomedicine.org/forefront/health-and-wellness-articles/....} 。アップルサイダービネガーは、名前の通りリンゴを発酵させて生産されますが、その発酵過程で酵母と細菌の組み合わせで生成されるのがマザー。通常、ろ過するとこのマザーは取り除かれてしまいますが、ろ過をしない濁ったアップルサイダービネガーにはこのマザーが含まれ、透明のアップルサイダービネガーでは得ることのできない消化器系の健康に有意に働く可能性があると言われています^{[#]“Apple Cider Vinegar.” n.d. Accessed December 2, 2021. https://www.webmd.com/diet/apple-cider-vinegar-and-your-health.} 。選ぶのであれば、何も表示がない商品ではなく、「MOTHER」等の表示がある濁ったアップルサイダービネガーを選ぶようにすると効果が期待できそうです。

添加物入りはNG。

市販されているお酢の原材料表示を見ると、

原材料:果糖ぶどう糖液糖、醸造酢、砂糖、食塩、レモン果汁、昆布だし、酸味料、調味料(アミノ酸等)、香辛料、(原材料の一部にりんごを含む)

といったように砂糖や添加物で味付けがされているものも多数あるので注意が必要です。アップルサイダービネガーはほとんどがリンゴを原料としたナチュラルなものが多いので添加物の側面では比較的安全です。一方、注意すべきは上記で述べたバルサミコ酢。そもそもバルサミコ酢は、北イタリアのモデナ地区とレッジョ・エミリア地区で独自の製法で生産され、イタリア政府によって定められた原産地管理呼称法の基準を満たし認定されている必要がありますが、市販のバルサミコ酢には、この基準をクリアーしていない商品が出回っているだけではなく、

原材料: ぶどう果汁、カラメル色素

といった添加物が含まれている偽物のバルサミコ酢が出回っていることが問題となっています。購入の際は、必ず、産地を確認するようにしましょう。品質の基準をクリアしているバルサミコ酢は必ずイタリアモデナ産などの表示があります。

まとめ～選び方が下手だとかえって体に悪い？健康効果が期待できるお酢の選び方。～
お酢に期待できる大きな健康効果はあまりないのにも関わらず、健康効果を期待して必要以上に料理にふりかけたりすることで、ヒスタミンを多く摂取することになりかねません。ましてや、そのままお酢を飲むなんて行為はNG。少量であれば体に害はなさそうなので、選ぶのであれば、わざわざヒスタミンが多めの高価なバルサミコ酢ではなく、「MOTHER」の表示があるアップルサイダービネガーであれば、安心して調味料のレパートリーとして使用できそうです。