スプレー内容物の有害性
スプレー缶の製品と言っても多種多様ですので、VOC以外の原材料についても有害性の高い物質が含まれていることもあります。
フタル酸エステルや合成ムスクなどの香料
ボディスプレーやヘアスプレーや消臭剤などは、ほとんどの人が日常的に使用しているパーソナルケア製品ですが、家庭に置いてある身の回りの製品を確認するとその多くがスプレー缶であることに気が付くと思います。天然成分を特別に使用していない限り、これらのスプレーのほとんどに合成香料が含まれていますが、その中でも特に注意すべきが、フタル酸エステルや合成ムスク。以前に特集した環境ホルモン物質のフタル酸エステルに関する記事を見た人は、成分表などをチャックをして極力避けるように心がけていると思いますが、人工的に合成された香料の合成ムスクは成分表に記載されていないことがあるので少々やっかい。この合成ムスクは、生体内に蓄積し、ヒトの母乳、体脂肪、血液、および臍帯で検出されている化学物質。フタル酸エステルと同様に環境ホルモン物質としてホルモン作用をかく乱し、細胞機能を損傷させる可能性が指摘されています。
香水、石鹸、ボディウォッシュ、スプレー、ローション、ヘアケア製品、洗剤、軟化剤
と、スプレー製品に限らす、ほとんどのパーソナルケア製品に含まれているといっても過言ではありませんが、スプレー式の場合、これらの化学物質を周囲にまき散らしてしまい、呼吸で吸引しやすい状況を作りやすいということを忘れないでください。
塗料スプレーなどのジクロロメタン(塩化メチレン)
こちらもVOCと同様に環境問題でフォーカスされがちなジクロロメタン(塩化メチレン)。アメリカのEPA(米環境保護庁)は、2019年に塗料やペイント剥離剤などでのジクロロメタンの使用を禁止していますが[#]Epa, U. S., and OCSPP. 2016. “Risk Management for Methylene Chloride,” January. https://www.epa.gov/assessing-and-managing-chemicals-under-tsca/risk-man.... 、日本では生産量は減少傾向にあるもののまだまだ使用されている化学物質の1つです。特に、趣味でハンドクラフトなどが好きな人はこういった製品を多用している可能性があります。このジクロロメタンはIARC(国際がん研究機関)が評価する発ガン性物質として
グループ2A ヒトに対しておそらく発ガン性がある。
と評価されています。研究では、高濃度のジクロロメタンを吸入したマウスに対して悪性の肺腫瘍および肝臓腫瘍の発生率を大幅に増加させたという報告や[#]Reitz, R. H. 1991. “Estimating the Risk of Human Cancer Associated with Exposure to Methylene Chloride.” Annali dell’Istituto Superiore Di Sanita 27 (4). https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/1820733/. 、ジクロロメタンを使用している工場の従業員のガンや心臓、中枢神経系および肝臓への悪影響も報告されています[#] “Methylene Chloride - Hazard Recognition.” n.d. Accessed December 15, 2021. https://www.osha.gov/methylene-chloride/hazards. 。もちろん、これらの例は一定の体重に対してかなりの量のジクロロメタンを吸引している結果ではありますが、毒性が強い化学物質を少量でも吸引を避けるのに越したことはありませんよね。特に何も知らない子供が工作で使用することもあるはず。十分に注意をするべきです。
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