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連載コラム カナダ在住薬剤師が伝授!実践サプリ講座(12)心を元気にするサプリ
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連載コラム カナダ在住薬剤師が伝授!実践サプリ講座(12)心を元気にするサプリ

 

入学式、入社式、クラス替え、職場の異動等と環境の変化が多くなる時期になりました。こういった環境の変化、新しい人間関係などは体と精神に大きな負担をかけます。五月病という言葉もあるように、新しい環境に適応しきれないことに起因する精神的症状は珍しくありません。

米国国立精神衛生研究所によると、年間にアメリカの成人の22%が心の不調を感じているという報告があります。つまり5人に1人のアメリカ人成人が気分のふさぎなどの心の病を抱えており、ひどくなると「うつ病」などの心の病気になります。うつ病になってしまうと薬物治療などで改善するのに約3年かかってしまうといわれていますが、私が住むカナダでも、現実には一旦抗うつ剤を始めてしまうとその治療から解放される患者さんは少数です。

 

心の不調を改善するには様々な方法があります。

  • 休息
  • 読書
  • 運動
  • 日光浴

 

それでもなんだか気分があがらないという方に心を元気にするといわれているサプリを数点紹介したいと思います。

 

1)セントジョーンズワート(西洋オトギリソウ)

このハーブはヨーロッパやアメリカに広く自生する黄色い花を咲かせる多年草です。ヨーロッパ諸国では軽度のうつ症状の場合には抗うつ薬より広く処方されているほどです。英国国立医療技術評価機構では軽度のうつ病で抗うつ薬の使用は副作用などのリスクがあるのに対し、このセントジョーンズワートの使用により抗うつ効果が得られる可能性はあるという記載もあります。セントジョーンズワートの薬理機能は現時点では不明ですが、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)などの抗うつ薬と同様にセロトニンの再吸収を阻害すると言われています。その性質のため、抗うつ薬(SSRI)との併用禁忌になっています。

セントジョーンズワートの使用の歴史は長いのですが有効成分はいまだ研究中です。ハイパフォリン、フラボノイド、タンニンなどが抗うつ作用があるとの研究結果が発表されています[#]“Overview | Depression in Adults: Recognition and Management | Guidance | NICE.” n.d. Accessed April 10, 2019. https://www.nice.org.uk/guidance/CG90.  [#]“Website.” n.d. Accessed April 10, 2019. https://www.fasebj.org/doi/10.1096/fj.07-8110com.  [#]Linde K, Et al. n.d. “St John’s Wort for Major Depression. - PubMed - NCBI.” Accessed April 10, 2019. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18843608.  [#]“[Mental Ill Health in Primary Care].” n.d. Accessed April 10, 2019. https://pdfs.semanticscholar.org/7cc5/f2c177c47af246ab1390e97938077cef4d....

推奨摂取量)1日に350-1800㎎ (処方薬との相互作用が多いサプリですので服用前には必ず医師、薬剤師に相談をしてください。)

 

2)DHA・EPA

過去の記事でも紹介している、皆さんお馴染みのDHA・EPAですが、実は体だけでなく心も元気にするといわれています。最近ではEPA、DHA摂取によって中高年者のうつ傾向リスクの低下が確認されたという嬉しい研究結果も発表されています。

また、フィンランドの住民を対象にしたアンケートで、魚を週に2回食べるか否かで、自殺願望などのうつ傾向が半減するという報告があります。また、日本で約27万人を対象にして17年間も追跡調査をした結果、毎日魚介類を摂取している人はそれ未満の人より自殺の危険性が19%少ないという興味深い報告があります[#]Sinclair AJ, Et al. n.d. “Omega 3 Fatty Acids and the Brain: Review of Studies in Depression. - PubMed - NCBI.” Accessed April 10, 2019. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17392137.  [#]“情動とω系多価不飽和脂肪酸” n.d. Accessed April 10, 2019. https://journal.jspn.or.jp/jspn/openpdf/1110121520.pdf.

推奨摂取量)最大1日に2000㎎まで

【関連記事】「実践サプリ講座(11)オススメのオメガ3のサプリメント
 

 

3)ギャバ

ギャバは私たちの体内にも存在する天然アミノ酸の一つです。主に抑制系の神経伝達物質としての働きがあり、ギャバの量を増やす薬は主に鎮静作用、抗痙攣、抗不安作用を持っています。ギャバは特に発芽玄米に多く含まれ食事からも摂取が可能です。

また、ギャバは睡眠との関わりの深いメラトニンの生成にも大きく関与していると考えられており、GABAの不眠への効果について多くの研究がなされています[#]Sato, Shun, Chengzhu Yin, Akira Teramoto, Yasuo Sakuma, and Masakatsu Kato. 2008. “Sexually Dimorphic Modulation of GABAA Receptor Currents by Melatonin in Rat Gonadotropin-Releasing Hormone Neurons.” The Journal of Physiological Sciences: JPS 58 (5): 317–22.  [#]“[PharmaGABA: Natural Support for Stress, Anxiety and Insomnia].” n.d. Accessed April 10, 2019. https://bioclinicnaturals.com/wp-content/uploads/2016/06/CH-GABA.pdf.

推奨摂取量)100mg-200㎎ 1日に2-3回

 

4)テアニン

テアニンとはお茶に多く含まれるアミノ酸の一種です。皆さんお茶を飲むと「ホッ」としますよね。

これはお茶に含まれるテアニンの効果も一因だといわれています。テアニンを摂取した30分後にリラックス効果を示すα波が確認されることが報告されており、またセロトニン、ドーパミン、GABAを増やし抗ストレス作用もあるといわれ、このテアニンとカフェインを併せて含んでいるお茶はヌートロピック(頭脳の働きをよくする物質)の作用も持ち合わせていると考えられ、多くの研究者が研究を重ねています[#]“[健常成人を対象とした「シスチン・テアニン食品」の過剰摂取における安全性の検討].” n.d. Accessed April 10, 2019. https://www.jstage.jst.go.jp/article/seikatsueisei/52/4/52_4_229/_pdf.  [#]小林加奈理, 長戸有希子, 青井暢之, ジュネジャ L. R., 金武祚, 山本武彦, and 杉本助男. 1998. “L-テアニンのヒトの脳波に及ぼす影響.” 日本農芸化学会誌 72 (2): 153–57.  [#]Kimura K, Et al. n.d. “L-Theanine Reduces Psychological and Physiological Stress Responses. - PubMed - NCBI.” Accessed April 10, 2019. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16930802.  [#]“Website.” n.d. Accessed April 10, 2019. https://www.jstage.jst.go.jp/article/nogeikagaku1924/72/2/72_2_153/_arti.... 加奈理小林, 有希子長戸, 暢之青井, ジュネジャL.r., 武祚金., 武彦山本, and 助男杉本. 1998. “L-テアニンのヒトの脳波に及ぼす影響.” 日本農芸化学会誌 72 (2): 153–57.

推奨摂取量)1日に100㎎程度 (お茶を多く飲む日本人の場合、サプリとしても摂取するときは摂取量に注意)

【関連記事】「緑茶は体にいいこといっぱい!でも注意も必要?

 

心の不調は、悪化すると副作用のひどい薬に頼らざる負えなくなってしまいかねません。症状がひどくなる前に心と体に必要な栄養素をまずサプリで補給すれば気分が好転するかも? 

 

著者プロフィール

-マイルバガナム-
2004年からカナダ在住。薬剤師として働いている二児のママ。複雑な家庭環境で育ったため、幼少の時から哲学、思想に興味があり、自分自身の心身を保つ為いつも心に栄養がいくような生活を送れるように意識している。身体と脳が喜ぶ食事に興味があり。自分でできる範囲のホールフーズダイエット実践中。

 

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